研究課題/領域番号 |
17H03564
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
山内 淳司 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20335483)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミエリン化 / 再ミエリン化 / ミエリン維持 / ミエリン再編 / ミエリン再生 / 受容体 / アダプター分子 / サイトヘジン |
研究実績の概要 |
シュワン細胞においても、自然状態でのミエリンの脱落と再ミエリン化が起きることが知られている(Morell編集「Myelin」Prenum Press 1984年)。マウスやラットで、標識化合物を用いたパルスチェイス実験から、生後約半年で「多くのミエリンが入れ替わる」ことが明らかにされた。ただし、数日または数週間で入れ替わるようなミエリンもあるという。ミエリンは両神経系で、必要性に応じて、柔軟に、その部分構造や形成過程の一部を変化させることができるものであるようだ。 胎生発生期から12か月齢までのマウスの代表的な末梢神経(坐骨神経)における経時的なトランスクリプトーム解析、および6か月間に渡るシュワン細胞と神経細胞の前駆細胞同士の共培養におけるトランスクリプトーム解析の結果を比較したデータから、坐骨神経を材料にした研究において、既知または機能未知の転写産物の種類と量が大きく変化する時期が、発生期以外にもあることが判明した。それは、生後約半年の時期であった。つまり、1984年までの先行研究で明らかにされた「多くのミエリンが入れ替わる時期」と一致していた。また、共培養では約2か月で転写産物の変動と再ミエリン化が誘導される現象が観察された。 応募研究においては、まず、これまでの研究過程で獲得されたトランスクリプトーム解析のデータを活用することで(1)どのような分子が発生期を過ぎたミエリンの形成に関与し、その再編および恒常性の維持に関与しているのか明らかにし(2)それらが発生期でミエリン形成に関与する分子と共通性がありミエリン形成のプログラムを再誘導しているのか、もしくはそれとはまったく異なったメカニズムでミエリン化が促進されるのか明らかにすることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インビトロ共培養システムで選定された分子の遺伝子改変マウスを作製することで、その役割を検討する。それには2種類の遺伝子改変方法(1)ミエリン特異的プロモーター制御下で、組織および時期特異的にCreERT2を発現させることで、標的分子のshRNAが転写誘導されるトランスジェニックマウス作成法(2)ゲノム編集によるノックアウト法を用いる。前者のマウス作製方法は、応募者独自の技術であり、既に予備的に成功している(鳥居,応募者ら Biochem.Biophys.Res.Commun. 2014/2015の技術を応用したもの)。マウスでミエリン再編の推定時期にCreERT2を誘導することで、ミエリン再編にどのように選出される分子が関与するのか検討できる。これを用いて関係する遺伝子改変マウス作成に着手しており、一部のマウスに関してはラインをしっかりとることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに予定された研究が遅れた場合は、それらの研究を以下の研究と並行して行う。一方、インビトロレベルで選定された分子がインビボレベルで実際にミエリン編成に関与しているか検討する。 最終的に、末梢神経断面の組織染色写真や電子顕微鏡写真を撮影することで、ミエリンを形態的に調べる。また、末梢神経の電気伝導速度を測定する機能アッセイも行う。以上、インビトロ、インビボ両面の研究から総合的にミエリン再編に関与する主要な分子を明らかにし、それが発生期のミエリン形成を司る分子経路と共通であるのか、独立したものなのか明らかにする。
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