研究課題
昨年度までに構築したiPS細胞技術を応用した新規MAIT細胞マウスモデルの評価を行った。1) iPS細胞由来MAIT細胞のマウスへの移入:従来報告されている多能性幹細胞からのT細胞分化誘導法に基づいて作製したマウスMAIT細胞を野生型B6マウスに腹腔内接種し、1~2週間後の移入細胞の組織局在と機能成熟をフローサイトメトリーによる細胞表面マーカーの発現を解析することにより検討した。その結果、移入したiPS細胞由来MAIT細胞は脾、肝、肺、腸管、リンパ節などの組織から分離することができた。また移入前のiPS細胞由来MAIT細胞はナイーブT細胞のフェノタイプを呈したが、マウスへ移入後1~2週間で各種細胞表面マーカーの発現が内在性MAIT細胞に近づいた。このことからiPS細胞由来MAIT細胞はマウス生体内で機能成熟することが示された。さらにその詳細を明らかにするため、内在性MAIT細胞と移入後回収したiPS細胞由来MAIT細胞のRNAseqによるトランスクリプトームデータを比較検討中である。2)MAITマウスにおけるMAIT細胞の解析:MAIT細胞由来iPS細胞からキメラマウスを経て樹立した2系統のMAITマウスにおけるMAIT細胞の組織分布を調べた。MAIT細胞に特異的な再構成済みT細胞受容体α鎖(Vα19-Jα33)を持つVα19マウスではいずれの組織においてもT細胞の40%以上がMAIT細胞であり、MAIT細胞由来再構成済みT細胞受容体β鎖(Vβ8-D1-Jβ1-2)を持つVβ8マウスでは肺、肝臓でそれぞれΤ細胞の約15%、7%、その他の組織で0.5~2%であった。
3: やや遅れている
当初の計画では構築されたマウスモデルにおけるMAIT細胞の組織分布から感染モデルに使用する細菌と接種経路を決定し、本年度中に感染実験を行う予定であった。
新規MAITマウスモデルではあらゆる組織にMAIT細胞が分布していることが明らかになったことから、BCGを用いた呼吸器感染と全身感染によってMAIT細胞機能を解析する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
J Infect Dis
巻: 217 ページ: 1865-1874
10.1093/infdis/jix625