研究の目的は、アトピー性皮膚炎を自然発症するKFRS4/Kyoラットを対象に、順遺伝学的手法を用いて、皮膚炎原因遺伝子を同定することである。 平成30年度は308頭のF2交雑子の皮膚炎発症の経時的変化をスコア化し、表現型を決定した。また、88個のSSLPマーカーを用いて遺伝子型を決定した。次いで、QTL解析を行い、皮膚炎の発症週齢、最高スコアを規定する遺伝子座を17番染色体遠位部に同定した。 また、80頭のN2交雑子を作出し、その皮膚炎発症を経時的に観察した。さらに、88個の遺伝マーカーを用いて遺伝子型を決定した。 令和元年度は、N2交雑子の皮膚炎発症の経時的変化をスコア化し、表現型を決定した。次いで、88個の遺伝マーカーを用いてQTL解析を行った。しかしながら、皮膚炎発症に係るQTLを見出すことはできなかった。QTLが検出できなった原因は、発症個体数が少なかったことが原因と考えられる。F2交雑子308頭のうち、皮膚炎発症個体を中心に183頭の個体について、1403個のSNPマーカーを用いてQTL解析を行った。その結果、発症時期に関するQTLを17番染色体遠位部に同定した。SSLPマーカーを用いた連鎖解析での結果を考え合わせると、17番染色体遠位部にKFR4ラットの皮膚炎発症を規定する遺伝子座があると考えられた。このQTLをatopic dermatitis in KFRS4-1(Adermk1) と名付けた。Adermk1領域中の遺伝子のうちで、免疫系の調節に関与している遺伝子としてGata3を見出した。そこで、Gata3遺伝子のCDSをシークエンスし、KFRS4とPVGで比較した。しかし、アミノ酸置換を生じるような差異は見出せなかった。
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