研究課題
AMPKを活性化するMetforminが,既存のCOPDモデルマウス (Elastase誘導モデル) の肺病態を保護するという報告がなされたが,Elastase誘導モデルは急性モデルであり,また顕著な粘液貯留を認めないという欠点を有する.本研究では,閉塞性肺疾患の発症や病態進行に関わる因子の探索と標的化を企図し,本研究室で確立した粘液貯留を呈する新規の慢性COPDモデルマウス (βENaC-Tgマウス)を用い,Elastase誘導モデルとの生化学的・組織学的指標による病態比較及びMetformin投与による肺病態への影響について検討を行った.βENaC-TgマウスとElastase誘導モデルマウスの肺気腫病態の詳細な評価を実施するため,マウス肺全体画像を用いた新規の画像診断パラメーター (面積・周囲長・(長径+短径)/2・フェレ径) を計測した (BZ-Analyzer, Keyence).さらに,Q-RT-PCR法にてCOPDの主徴である炎症・老化に関わる遺伝子発現を解析した.最後に,βENaC-Tgマウスに対するMetformin (5 mg/mL,4週間,自由飲水) の効果について,組織学的・呼吸力学的解析を実施した.その結果,まず,βENaC-Tg及びElastase投与マウスの両モデルで,肺気腫の一般的な指標である平均肺胞径 (MLI) 及び画像診断に基づいた各種肺気腫パラメーターの有意かつ同程度の上昇が認められた.一方,得られたデータの変動係数解析 (ばらつきの指標) から,βENaC-Tgマウスは,広範かつ均等な肺気腫病態を呈すること,さらには,生化学的解析により,炎症・老化関連遺伝子の安定した発現上昇を認めることが明らかになった.最後に,Metforminの持続的投与は,βENaC-Tgマウスの肺気腫病態及び呼吸機能の低下を改善させることが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
当初予定通り,閉塞性肺疾患の発症や病態進行に関わる因子の探索と標的化を企図し,Metforminの有用性について,明らかにすることに成功した.
今後も閉塞性肺疾患の発症や病態進行に関わる因子の探索と標的化を企図し,本研究室で開発したβENaC-Tgマウスと,疫学解析に着眼し,さらなる因子の探索を試みていく予定である.
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Biochemical and Biophysical Research Communications
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