研究課題/領域番号 |
17H03572
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
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研究分担者 |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 准教授 (10398753)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニッチ / 多発性骨髄腫 / インタラクトーム / ヒト環境マウス / ニッチ間相互作用 |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫は、病態が非常に複雑な不治の病であり、ニッチにおける骨髄腫細胞の動態が治療抵抗性や再発の根本原因である。本研究は、申請者らがすでに確立したヒト多発性骨髄腫モデルマウスを利用して、ヒト由来骨髄腫細胞と宿主であるマウス環境との「がん―ニッチ相互作用全体(インタラクトーム)」を定量的に同定し、多発性骨髄腫の病態におけるその相互作用の役割を実験的に明らかにすることによって、治療標的を特定することを目的とする。 ヒト疾患モデルマウス(NOGJマウス)を作成して、このマウスにヒト骨髄腫細胞を移植すると、顕著に腫瘍の生着が向上することを見出した。の結果は、環境側のJagged1を介したNotchシグナルの活性化が骨髄腫細胞の増殖等に重要であることを示しており、骨髄環境、つまりニッチにおけるNotchシグナルを標的とするがん治療の開発が期待できると考えた。 また、ヒト骨髄腫細胞を免疫不全マウスに移植するという異種移植モデルであることの特徴を生かして、トランスクリプトームシーケンスにより骨髄腫細胞とニッチ側の遺伝子を判別し、in vivoにおけるがんーニッチ間相互作用を定量的に同定するというこれまでにない手法を確立したので、ニッチを標的とするがん治療の開発を目指した本研究計画を立案した。これらにおけるインタラクトーム解析により、2種類の骨髄腫細胞株を移植したヒト骨髄腫モデルの解析で得られた1200以上の相互作用から、相互作用の強さや特異性を基準として、Notch-Jagged1以外に10程度の組み合わせが絞り込まれており、新たな治療標的分子を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、異種移植モデルのインタラクトーム解析という新たな手法により、ヒト「がん細胞」側とマウスのニッチ側の遺伝子発現をそれぞれの塩基配列の違いから判別し、定量化して得られる発現プロファイルと、公共のタンパク相互作用データベースの情報を結合することで、これまでできなかったがんニッチにおける相互作用全体の包括的解析を可能にする。さらに、後述する計算式を用いて、個別の相互作用(右下図矢印)の強さと特異性を相対的に評価して、特定のがんおよび症例の病態に最も寄与の高い「がん細胞」とニッチの相互作用を同定し、創薬標的候補とする。 骨髄腫細胞株を移植したヒト骨髄腫モデルの解析で得られた1200以上の相互作用から、相互作用の強さや特異性を基準として、Notch-Jagged1以外に10程度の組み合わせが絞り込まれており、新たな治療標的分子を同定する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、Notchシグナル解析およびインタラクトーム解析により創薬標的となる分子シグナルを同定してきた。平成30年度以降は、患者特異的モデルマウスを利用して、個々の患者における病態決定因子を同定し、最終的には、患者特異的モデルおよび細胞株移植モデルを用いて、がんーニッチ間相互作用を標的とした抗腫瘍効果を判定することにより、ニッチをターゲットとした治療法開発の基盤となる知見を収集する。 1)個々の患者特異的骨髄腫モデルマウスにおける相互作用と分子シグナルの活性化を明らかにし、患者の個別臨床データと対比してその病態を決定している分子を特定する。 2)ニッチを介した標的分子シグナルを、阻害剤等を用いて遮断した場合の抗腫瘍効果をin vivoにて判定する。 3)上記結果を基に分子標的治療薬の開発を目指す。
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