研究課題
多発性骨髄腫は、病態が非常に複雑な不治の病であり、ニッチにおける骨髄腫細胞の動態が治療抵抗性や再発の根本原因である。本研究は、申請者らが既に確立したヒト多発性骨髄腫モデルマウスを利用して、ヒト由来骨髄腫細胞と宿主であるマウス環境との「がんーニッチ相互作用(インタラクトーム)」全体を定量的に同定し、多発性骨髄腫の病態におけるその相互作用の役割を実験的に明らかにすることによって、治療標的を特定することを目的とする。ヒト疾患モデルマウス(NOGJマウス)を作成して、このマウスにヒト骨髄腫細胞を移植する異種移植モデルにより骨髄環境、つまりニッチにおけるNotchシグナルの重要性を見出した経験から、トランスクリプトームシーケンスを用いて、より網羅的にin vivoにおけるがんーニッチ間相互作用を定量的に同定し、ニッチを標的とするがん治療の開発を目指した本研究計画を立案した。2種類の代表的な骨髄腫細胞株を移植したヒト骨髄腫モデルのインタラクトーム解析で得られた1200以上の相互作用から、相互作用の強さや特異性を基準として、Notch-Jagged1以外に、特に代表的な多発性骨髄腫治療薬であるボルテゾミブ投与により発現の変動する、すなわち抗癌剤耐性に関与すると思われる10程度の相互作用を同定した。また、患者骨髄腫細胞を移植したヒト骨髄腫マウスモデルからの骨髄サンプルも採取済みであり、今後インタラクトーム解析を行い、骨髄腫細胞株を用いたインタラクトーム解析結果と対比させることで検証する。がんニッチによる薬剤耐性に関わる相互作用の中で、生体内で多彩な生理活性作用を示すセマフォリンとその関連因子、そして細胞間接着に関わるクローディン間相互作用という候補を見出しており、今後その生物学的意義を検証する。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020
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