研究課題/領域番号 |
17H03575
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 洋一 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20272560)
|
研究分担者 |
山口 貴世志 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (50466843)
池上 恒雄 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396712)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | がん / シグナル伝達 / Wnt |
研究実績の概要 |
平成29年度は、β-catenin/TCF7L2 により直接発現誘導されるFRMD5 (FERM-domain-containing protein 5)について、FRMD5をノックダウンした細胞を用いた機能解析を行った。その結果、細胞周期に関してはHCT116細胞ではS期細胞の減少が認められたが、DLD1やLS174T細胞では細胞周期に有意な変動は認められなかった。またEMTの指標であるE-cadherinの発現低下や、細胞運動への一致した影響は認められなかった。そこでFRMD5のノックダウンによる網羅的な遺伝子発現解析とパスウェイ解析を行った。発現解析では、発生過程で細胞移動に関与するLEFTY1などの発現増加と、がん化関与するMYBなどの発現低下、パスウェイ解析ではDNA複製、細胞周期、細胞外マトリクスに有意な相関を認めた。これらの結果は、FRMD5の更なる機能解析に役立つものと期待される。大腸がん組織でのFRMD5の発現と臨床情報との相関では、FRMD5の発現が高い腫瘍ほど予後不良であることが判明した。したがってFRMD5は新たな大腸がん予後マーカーとして有用であるかもしれない。 β-catenin/TCF7L2 により転写が抑制される候補遺伝子の中で、大腸がん組織で発現低下しているinterferon-induced protein with tetratricopeptide repeats 2 (IFIT2)遺伝子について、その発現調節機序の解析を行った。IFIT2プロモーター領域のレポーターアッセイにより、β-catenin siRNAでレポーター活性が上昇することから、プロモーター領域にβ-catenin/TCF7L2シグナルで抑制される領域があることが示唆された。現在この調節領域の同定と、その領域に結合する調節因子の探索を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FRMD5については研究成果の一部を、論文として発表することができた。またIFIT2についても、その調節機序とWnt活性化によるIFIT2の発現抑制ががん細胞に及ぼす影響について明らかにすることができ、論文として発表できた。
|
今後の研究の推進方策 |
WntシグナルによるIFIT2の発現抑制メカニズムについて、さらに詳細な解析を行う。具体的にはIFIT2のWntシグナル関連調節領域を同定し、その領域内の転写因子結合配列から候補転写因子群を推定する。これらの候補転写因子がIFIT2の転写活性を変化させるか、また調節領域に結合するかどうかを調べる。次にその転写因子がWntシグナルで制御されているかどうか検討する。更にその転写因子が発現調節しているIFIT2以外のターゲット遺伝子、パスウェイなどについても探索し、その転写因子の役割を明らかにする。 β-catenin/TCF7L2 により発現誘導されるFRMD5以外の新規遺伝子についても、その転写調節領域を同定する。そのために候補領域をレポーター遺伝子上流にクローニングしてレポーターアッセイを行い、β-cateninに対するsiRNAによってその活性が変化するかどうかを調べる。またその調節領域にβ-catenin/TCF7L2複合体が結合するかどうか検討する。
|