研究課題
令和元年度は、古典的Wntシグナル(β-catenin/TCF)の活性化により発現が負に制御される転写因子interferon regulatory factors 1 (IRF1)について、その発現抑制機序の解明を試みた。β-cateninをsiRNAでノックダウンした際に、RNAの有意な増加はないにもかかわらずIRF1タンパク質が増加すること、プロテオソーム阻害剤であるMG132 によってもIRF1が増加すること、さらにβ-cateninのノックダウンによりIRF1のユビキチン化が減少することから、Wntの活性化によりIRF1タンパク質のユビキチン化が促進し、タンパク質が不安定化されて減少することが明らかとなった。またIRF1タンパク質のユビキチン化に関係するE3リガーゼや脱ユビキチン化酵素に着目してsiRNAスクリーニングを行ったところ、脱ユビキチン化酵素USP1が関与する可能性が示された。そこでUSP1をノックダウン、あるいはUSP1の特異的阻害剤で機能抑制したところ、Wntの活性化によるIRF1の増加が抑制された。そこでWntシグナルがどのようにUSP1の機能に影響を及ぼすか検討したところ、Wnt活性化がUSP1に結合するタンパク質UAF1の発現を抑制することを見出した。これらの結果からWnt活性化がUAF1を抑制し、UAF1に結合するUSP1の機能抑制を通じてIRF1タンパク質分解を促進することが示唆された。本発見は、古典的Wntシグナルがβ-catenin/TCF転写複合体の活性誘導を通じて下流遺伝子の発現を増加させるとともに、脱ユビキチン化酵素を通じてタンパク質を不安定化し調節することを示した初めてのものである。本結果は、論文(Ohsugi T, et al. Oncogene, 38(32):6051-6064, 2019.)として報告された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/furukawa/research/