ダウン症因子 (DSCR)-1 を発生期から過剰に発現すると血管芽細胞 Hemogenic angioblats が出来ずに胎生致死となるが、内皮特異的に発生期から1.5 倍(ダウン症様の)発現をヘテロ Tg にて誘導すると、VEGF-NFAT 下流の DLL4/Notch 経路が遮断されて血管の分岐・増殖が遅延する結果となった。また胎生期の DSCR-1 発現が多いほど胎仔の大きさが小さく、血管分岐が減少し、血管リモデリングが阻害されている分、既存の血管が代償的に太くなる傾向が確認された。しかし興味深いことに生後は DSCR-1 過剰発現アレルを持たない内皮細胞が競合して修復し血管が正常化すること、一方、adult マウスを用いて更にB16メラノーマ、ルイス肺がん細胞を皮下移植した場合、そのがん増殖過程での血管新生が抑制されることで、ダウン症モデル同様、極めて強いがん増殖への抵抗性が生じることが明らかとなった。 一方、VEGF や血流刺激を介したNFAT の核内移行(活性化スイッチ)は全ての内皮細胞で同時に生じることはなく、不均一性性を持っていること、NFAT 核内移行とその下流のフィードバック因子 DSCR-1 の誘導サーキットを介し、振動シグナルとして伝わるが、それが、血管分岐にも関与しており、in vitro モデル系を基にした包括的マイクロアレイの結果から NFAT がNotch シグナル Dll4 を誘導し、Dll4 を受けた分岐内皮細胞がHey1/2 のNFAT プロモーター上への結合を経てNFAT 自身の発現を抑制すること、この相互抑制関係を生み出し、血管分岐のダイナミックな活性制御に深く関与している知見が得られた段階である。
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