研究課題
平成 29 年度は以下について検討を行った。①小細胞肺癌の遺伝的背景とフェロトーシス感受性の関連についての検討:xCT阻害剤への感受性が異なる小細胞肺癌SBC3細胞と非小細胞肺癌PC9細胞におけるマイクロアレイ解析を行った。その結果、フェロトーシス感受性のSBC3細胞は、低感受性のPC9細胞と比較して、上皮間葉転換(EMT)関連遺伝子やALDH1の発現が亢進していた。このことから、フェロトーシス感受性の小細胞癌細胞は、未分化ながん幹細胞様の性質を持つことが示唆された。②小細胞肺癌特有の遺伝子変化がフェロトーシス誘導に与える影響についての検討:6種類の非小細胞肺癌細胞においてRbのノックダウンを行ったが、xCT阻害によるフェロトーシス感受性は亢進せず、Rbのステータスとフェロトーシス感受性には関連が無かった。一方、フェロトーシス感受性の小細胞癌細胞ではxCTの発現が極めて低いことが分かった。そこで、小細胞癌細胞にxCTを過剰発現すると、xCT阻害剤によるフェロトーシス誘導が抑制され、xCT発現は肺癌細胞のフェロトーシス感受性を決定する因子であることが分かった。③xCT阻害剤耐性小細胞肺癌細胞の作製と耐性化に関わる遺伝子発現解析:フェロトーシス感受性が高い小細胞肺癌細胞株(SBC3, SBC5細胞)からxCT阻害剤耐性株を作成し、遺伝子発現を解析した。 ④小細胞肺癌に高頻度で見られる遺伝子変化を反映した多段階変異によるモデルマウスの作製:マウス肺から単離した細胞集団からオルガノイドを作成した後、NE細胞マーカーであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)プロモータ―領域を有するレ―ポーター遺伝子を導入し、NE細胞由来オルガノイドを作成した。さらに、CGRP陽性および陰性の各オルガノイドからcDNAを作成し、マイクロアレイ解析を実施し、いくつかのNE細胞マーカーを取得した。
2: おおむね順調に進展している
本プロジェクトにおけるマイルストーンのうち、最も技術的に難しいと考えていたNE細胞の単離や培養に関して、初年度中に成功することができた。そのため、今後の予定通りに初代培養のNE細胞をin vitro実験系で用いることが可能になったため、計画は順調に遂行されていると考えられる。
今後、初代培養したNE細胞のオルガノイドを用いて遺伝子改変を行い、小細胞癌モデルを作成し、生体内でのがん細胞の増殖や浸潤能を評価するとともに、xCT阻害剤や抗がん剤を用いた治療実験を行う。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 497 ページ: 783-789
doi: 10.1016/j.bbrc.2018.02.154.