研究課題
平成 30 年度は以下の2項目について検討を行った。①xCT阻害剤耐性小細胞肺癌細胞(SCLC)の作製と耐性化に関わる遺伝子発現解析:前年度作成したxCT阻害剤スルファサラジン耐性SCLC細胞株SBC3-SSZR, SBC5-SSZRに加えてH446についてもスルファサラジン存在下の長期培養を行い、スルファサラジン耐性株を樹立した(H446-SSZR)。この細胞株も、別のxCT阻害剤であるエラスチンやGSH合成酵素阻害剤BSOに対しても明らかな抵抗性を示し、GSH枯渇に対して高い耐性化を獲得していることが分かった。現在、前年度に行ったフェロトーシス感受性および抵抗性に関わる遺伝子群の発現を調査することで、小細胞肺癌におけるフェロトーシス感受性を予測可能なバイオマーカーを同定した。②SCLCに高頻度で見られる遺伝子変化を反映した多段階変異によるモデルマウスの作製:前年度単離したNE細胞由来オルガノイドについて、CRISPR/Cas9によるTrp53およびRb1遺伝子のノックアウト実験を行った。しかしながら、マウス肺組織から得られる細胞数が極めて少ないことが分かり、効率的にNE細胞を単離する目的で新たにCGRP-Creマウスを作成した。マウスの作成については本田浩章教授(東京女子医大)の指導の下、CRISPR/Cas9にてCGRP遺伝子のエクソン4にノックインを行いCGRP-Creマウスを作成した。さらに、CGRP遺伝子の下流でTrp53およびRb1遺伝子がノックアウトされ、同時に癌遺伝子Mycが発現可能なSCLCモデルマウスを入手し、腫瘍オルガノイド作成用に繁殖させた。このため、来年度にSCLC特異的な遺伝子変化を反映したマウスモデルを用いてフェロトーシス感受性の比較を行うことが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
肺組織の中でもとくに少数の細胞集団であるCGRP陽性細胞を単離し、in vitroで遺伝子改変を行うにあたり、十分な細胞数が得られず、効率の悪さが問題となったが、CGRP遺伝子プロモーター下にCreを発現するマウスを作成し、in vivoで遺伝子改変を行うことで効率化を図った。
最終年度は、マウスSCLCモデルを作成し、組織学的検討を行うとともに、ヒト進展型SCLCとの組織学的および病態学的な類似性の検討を行う。さらに、xCT阻害剤などフェロトーシス誘導剤を用いて、非臨床POCの取得を目指した治療実験を実施する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
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