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2018 年度 実績報告書

癌幹細胞の可塑性が誘起する腫瘍転移の分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H03584
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

吉田 清嗣  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70345312)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード癌 / 幹細胞 / 転移
研究実績の概要

研究代表者がDNA損傷によって惹起される細胞死誘導リン酸化酵素として同定したDYRK2は、これまでの内外の研究から癌に抑制的に働くことが、乳癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、大腸癌、肝臓癌などで報告されている。本研究ではDYRK2の癌抑制機構について、その幹細胞性と転移における役割に注目しながら引き続き検証を進めている。2018年度は乳癌におけるDYRK2の役割について、 幹細胞性の制御をふまえた動物実験モデルで検証した。ホルモン受容体陽性乳癌細胞株であるMCF-7において、DYRK2の発現を抑制した細胞株を作成し網羅的発現解析を行って野生株と比較したところ、最も発現が増加した遺伝子としてCDK14を同定した。実際にMCF-7細胞においてDYRK2の発現を抑制するとCDK14の発現が上昇し、増殖能が顕著に増加した。DYRK2とCDK14の発現を抑制すると、in vitro、in vivoにおいてDYRK2単独抑制細胞よりも腫瘍増殖や浸潤能が減少した。実際の乳癌組織内においても、DYRK2が低発現の組織ではCDK14の発現は高かった。この分子機構として、DYRK2は転写因子ARを介してKLF4を転写制御することでCDK14の発現を調節して乳癌の幹細胞性を抑制することを見出した。DYRK2低発現細胞ではAR阻害剤であるMDV3100の添加でCDK14の発現が低下した。近年、ARを標的とした乳癌治療が効果的であるとの報告もあり、これまで悪性度が高いとされていたDYRK2低発現乳癌に対して、AR阻害剤が治療標的となる可能性がある。この結果をふまえて、他の癌種でも同様の制御機構が存在するのかについて検証を開始することとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

DYRK2による発癌制御や癌幹細胞性の維持について分子機構の解明に取り組んでおり、その一端を動物実験モデルで示すことが出来た。これは本研究の根幹をなすものであり、提示した仮説の方向性が概ね正しいことを意味する。DYRK2の発現制御についても、さらに幾つかの機構を想定して研究が進んでおり、来年度以降の成果が期待される。

今後の研究の推進方策

DYRK2の転移と幹細胞化との関わりについて様々な癌種で示すことが今後の課題であり、引き続き幹細胞性維持におけるDYRK2の役割について、研究を進めていきたい。in vitroのみならず、すでに遺伝子改変マウスを用いたin vivo実験を開始しており、実験系の妥当性を評価している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Mechanical insights into the regulation of programmed cell death by p53 via mitochondria2019

    • 著者名/発表者名
      Yamada Kohji、Yoshida Kiyotsugu
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Cell Research

      巻: 1866 ページ: 839~848

    • DOI

      10.1016/j.bbamcr.2019.02.009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Forced expression of DYRK2 exerts anti-tumor effects via apoptotic induction in liver cancer2019

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama-Mashima Shiho、Yogosawa Satomi、Kanegae Yumi、Hirooka Shinichi、Yoshida Saishu、Horiuchi Takashi、Ohashi Toya、Yanaga Katsuhiko、Saruta Masayuki、Oikawa Tsunekazu、Yoshida Kiyotsugu
    • 雑誌名

      Cancer Letters

      巻: 451 ページ: 100~109

    • DOI

      10.1016/j.canlet.2019.02.046

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tumor suppressive role for kinases phosphorylating p53 in DNA damage-induced apoptosis2018

    • 著者名/発表者名
      Yogosawa Satomi、Yoshida Kiyotsugu
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 109 ページ: 3376~3382

    • DOI

      10.1111/cas.13792

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 乳癌細胞株においてDYRK2はCDK14を介して腫瘍増殖を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      井廻良美、三本麗、山口乃里子、武山浩、吉田清嗣
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] DYRK2のプロモーター領域のメチル化は人の結腸直腸癌の進行を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      隈本智卓、山田幸司、青木勝彦、矢永勝彦、吉田清嗣
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会

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公開日: 2019-12-27  

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