研究課題
①HERC2とRPAの細胞内局在の解析:非ストレス時にHERC2はRPA2と核内に共局在するが、hydroxyurea添加後にRPA2が1本鎖DNA(ssDNA)上に集積し、核内fociを形成する際にはHERC2と共局在しないことが判明した。②HERC2とRPAの結合様式の解析:上記を反映し、HERC2がssDNA上に結合したRPAにanchorするのではなく、ssDNA上にRPAをreleaseすることを、in vitroにてHERC2-RPA複合体とビオチンラベルssDNAを混和させ、アビジンpulldownにて証明した。すなわち、HERC2がプールしていたRPAを複製ストレス下においてssDNA上に供給して機能を果たすことが示唆された。③グアニン4重鎖(G4)抑制におけるHERC2の役割:平成29年度以前の結果からHERC2のノックダウン(KD)細胞ではG4が蓄積することがわかっていたが、この蓄積がHERC2に結合するBLMおよびWRNヘリカーゼの機能に起因することをエピスタシス解析にて検討した。その結果、G4抑制において、BLMとWRNはエピスタシスな関係にないが、それぞれはHERC2とエピスタシスな関係にあることが判明した。さらに、BLMとWRNを同時に抑制した際に生じるG4の蓄積がHERC2単独の抑制によるG4蓄積と同等で、BLM, WRN, HERC2のトリプルKDでその量が変化しないことから、HERC2が両ヘリカーゼを統括する形で上流で制御していることがわかった。④薬剤感受性の解析:shRNAでHERC2を抑制した細胞およびHCT116ΔE3/ΔE3細胞のG4安定化剤pyridostatinに対する感受性をClonogenic survivalアッセイにて解析したところ、これまでわかっていたtelomestatinと同様に、感受性が有意に亢進していた。⑤ The Cancer Genome Atlas(TCGA)データを用いたin silico解析において乳がんを始め、多くのがんでHERC2の有意な発現低下を認めた。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の8割程度は実験が終了しており、また、今後の発展に繋がる新規知見も得ていることから、おおむね順調と判断した。
①HERC2とRPAの結合部位の解析:平成30年度までの結果から、HERC2がBLMおよびWRNヘリカーゼ複合体の足場タンパク質として働き、replication protein A (RPA)をリクルートする結果を得た。そこで、HERC2とWRNの結合様式を検討する。具体的にはHERC2のフラグメントを作成し、免疫沈降にてRPAとの結合部位をマッピングする。さらに、結合にプロテアソームの阻害がどのように影響するかを解析する。②HERC2によるG4制御がBLM機能不全に起因することを証明する:平成30年度までの結果から、CRISPR/Cas9にて作成したHERC2 E3活性のないΔE3/ΔE3細胞において、RPA2のユビキチン化が抑制されることを見出した。そこで、この細胞にRPAと結合し、HECTドメインを有するHERC2のフラグメントをadd-backしてユビキチン化をレスキューできることを確認する。③RPA2リン酸化におけるHERC2の役割:平成30年度までの結果から、HERC2のノックダウンがRPA2のSer33リン酸化に必須であることを見出した。そこで、どのような状況下でHERC2が役割を果たしているかを詳細に検討するため、mitomycin C, hydroxyurea, CPT-11, aphidicolin に誘導されるSer33リン酸化、さらに強いストレスによって生じるSer4/8のリン酸化におけるHERC2ノックダウン、あるいはΔE3/ΔE3の影響を解析する。また、ATRおよび、もうひとつのRPAユビキチンリガーゼであるRFWD3のノックダウンとの相互作用について検討する。④HERC2によるG4制御がRPA機能不全に起因することを証明する:平成30年度までの結果から、HERC2およびそのE3活性がG4制御に重要で、特にBLMとWRNの上流で作用していることが判明した。そこで、HERC2を介したBLMおよびWRNのG4抑制作用がRPAを介していることを、それぞれを組み合わせたノックダウンにおけるG4 fociを蛍光免疫染色にて検出し、エピスタシスにて解析する。
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http://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/index.html