研究課題
サンパウロ在住日系人を対象とした大腸腺腫研究および多目的コホート研究における大腸がんのデータセットを用いて、①候補遺伝子アプローチによる遺伝環境交互作用の検討、②潜在結果変数を用いた直接効果及び間接効果の推定による血漿バイオマーカーの意義づけの検討、③新規リスク要因として分岐鎖アミノ酸濃度および摂取量と大腸腺腫および大腸がんとの関連の検討している。①の遺伝環境交互作用の検討では、日系移民の大腸腺腫研究を解析対象集団として、「飲酒および葉酸摂取量とアルコール(ALDH2)および葉酸代謝(MTHFR、MTR)に関連する遺伝子多型」の検討のためのタイピングを実施し、「ビタミンD濃度とビタミンD受容体遺伝子多型」の検討のための血漿中ビタミンD濃度の分析を行った。②については、多目的コホート研究のベースライン調査による大腸がんのコホート内症例対照研究を解析対象集団として、大腸がんのリスク上昇に寄与する肥満の効果を、レプチンやアディポネクチンを介する経路、レプチンやアディポネクチンによらず高インスリン血症や慢性炎症を介する経路、レプチンやアディポネクチンを介さず、高インスリン血症や慢性炎症も介さない経路に分解し、潜在結果変数モデルによる解析を行ったところ、レプチンやアディポネクチンが極めて重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られた。③の研究として、今年度は多目的コホート研究の5年後調査アンケートに基づき、比較的長期の曝露を捉えた食物摂取頻度調査票から推定した分岐鎖アミノ酸の摂取量と大腸がん罹患リスクとの関連を予備的に検討したところ、男女共に摂取量との間に有意な関連は観察されなかった。また、同じく5年後調査に基づき大腸がんのコホート内症例対照研究のデータセットを構築し、血漿分岐鎖アミノ酸濃度の分析対象となる360ペア(1:2のマッチング)、1080検体の分注作業を開始した。
2: おおむね順調に進展している
①の遺伝環境交互作用の検討では、2つ目のテーマにおける解析がやや遅れているものの、②の潜在結果変数を用いた直接効果及び間接効果の推定においては、論文化に入り順調に進捗していること、さらに③の分岐鎖アミノ酸に関する検討は計画通りに進捗していることから、全体として概ね順調に進展していると判断した。
①の遺伝環境交互作用の検討では、日系移民の大腸腺腫研究を解析対象集団として、「飲酒および葉酸摂取量とアルコール(ALDH2)および葉酸代謝(MTHFR、MTR)に関連する遺伝子多型」および「ビタミンD濃度とビタミンD受容体遺伝子多型」の2つのテーマについて、平成30年度に実施したタイピングや血漿分析の結果に基づき交互作用の検討を実施する。②の潜在結果変数を用いた直接効果及び間接効果の推定においては、多目的コホート研究のベースライン調査による大腸がんのコホート内症例対照研究を解析対象集団として、潜在結果変数モデルにより明らかとなった過体重・肥満の大腸がんに対する効果の分解の結果を論文にまとめる。また、潜在結果変数モデルによる効果の分解について、他の適用例を検討する。③の分岐鎖アミノ酸に関する検討においては、多目的コホート研究の5年後調査による大腸がんのコホート内症例対照研究の血漿分岐鎖アミノ酸濃度の分析を継続し、結果が得られ次第、データ解析を行い、成果を論文にまとめる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Eur J Cancer Prev.
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10.1097/CEJ.0000000000000506.