研究実績の概要 |
グリオブラストーマ細胞ホーミングペプチド候補10種類のペプチド(GL-1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10)の中から複数のヒトglioblastoma細胞株を用いたin vitro assayにて吸収性を評価し、GL-3;RQADDRLTV, GL-4;RCWYAVLYP, GL-7;RRIHDFPLH の3種類を有力候補としたが、さらに正常細胞系(正常astrocyte, neuron, 肝細胞、腎尿細管上皮、気管支上皮、血管内皮、膵管上皮、線維芽細胞)を含めた多種類の発生母地の異なる細胞群と、標的とするGlioblastoma細胞(primary glioblastoma細胞1種、U87MG, Gli36, SF767, SK-AO2, SK-MG-1, U251, A172, T98の計9種類)への吸収度の違いの差異を指標にGL-4, GL-7を次段階の詳細な性能検討のために絞り込んだ。ここで、GL-4の疎水性度が高く完全溶解にはDMSOを要求することが確認された。従って、PBSやDDWに難溶性のため、本来の選択的吸収性を損なわない範囲での親水性の向上を企図した改良を要する。そこでRCWYAVLYPRR, RCWYAVLYPR, RCWYAVLYR, RCWYAVLR計4種類の配列改変体を作成し、現在in vitro assayにて解析中である。また、GL-4にはN末端から第二のアミノ酸位置にCys残基が存在するため、透過アッセイにおいて10%DMSO原液をPBS溶解状態にした場合のdimer形成の有無をmasspectrometryにて解析中である。これらを解析後に、ヒトGlioblastoma細胞移植マウスモデルへのin vivo投与実験を計画・実施し、vivoにおける標的腫瘍組織及び標的外の他の正常組織への分布・吸収性を評価する予定とする。
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今後の研究の推進方策 |
1.疎水性度の高い難溶性ペプチド配列をもつGL-4の親水性向上技術の確立: 本来の選択的吸収性を損なわない範囲での親水性の向上を企図した改良として、RCWYAVLYPRR, RCWYAVLYPR, RCWYAVLYR, RCWYAVLR計4種類の配列改変体を作成して検討する。 2.1.で最適化したペプチドのin vivo assayによる性能検討: ヒトGlioblastoma細胞移植マウスモデルへのin vivo投与実験を計画・実施し、vivoにおける標的腫瘍組織及び標的外の他の正常組織への分布・吸収性を評価し、この結果によりペプチドデザインの最適化達成を確認する。 3.ペプチドへのシグナル検出分子の標識法の創出(イメージング技術の確立のための):S/N比(signal vs noise ratio)10<(バックグラウンドである正常中枢神経組織に対して10倍以上の腫瘍への吸収効率)を達成することを目標とするため、ペプチドのN-terminus, C-terminus, あるいはLysine側鎖の応用など、ペプチドの性能障害を回避する最適な標識物(Fluorescein, 放射性核種)結合部位の同定を多角的に検討することが重要である。また、標識効率を高めるため、性能阻害を生じない最も適切なリンカーの応用を検討し、総合的に基本分子デザインの確立を進めていく。
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