研究課題/領域番号 |
17H03595
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 潔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20292906)
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研究分担者 |
國土 典宏 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 理事長 (00205361)
浦野 泰照 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20292956)
稲垣 善則 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40733390)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 抗癌剤 / ドラッグデリバリーシステム / 物質代謝 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、計画した研究項目(1)ICG結合型化合物の合成、(2)ICG結合型化合物の抗癌効果の評価(評価モデルの確立)について実施した。項目(1)に関する研究では、現在臨床で利用されている抗癌剤とICGとを結合させた化合物の合成を試み、複数種のICG結合型化合物を作製した。そして、項目(2)に関する研究において、作成されたICG結合型化合物の肝細胞癌細胞への取り込み及び抗癌効果に関してin vitro及びin vivoの方法を用いて評価した。その結果、in vitroでの生細胞評価法において、一部のICG結合型化合物は肝細胞癌細胞に対して殺細胞効果を有した。また、ICG蛍光法により、それらのICG結合型化合物は肝細胞癌細胞内に取り込まれ、蓄積されることを示した。さらに、皮下腫瘍モデルマウスの皮下腫瘍への直接投与という方法によりICG結合型化合物のin vivoでの抗癌効果を評価したところ、ICG結合型化合物の投与はICG結合前の抗癌剤よりも腫瘍の拡大を有意に遅延させた。しかし、現時点までに検討した投与法では、ICG結合型化合物の投与は腫瘍の縮小を誘導するには至っていない。なお、当該ICG結合型化合物に対するヒトへの応用に向けたICG結合型化合物の安全性試験を現在遂行中である。以上の結果から、作製したICG結合型化合物の一部が、肝細胞癌に対してICG結合前の抗癌剤よりも有効な抗癌効果を有することが示唆された。一方、作製されたICG結合型化合物は、ICGとは異なりマウスの正常肝臓にも蓄積するという性質が生じていることから、これを回避できる構造を有する化合物の作製を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞癌細胞に対して殺細胞効果を有する化合物を合成し、in vivo評価モデルにおいて有効な抗癌効果を示したという点で、当該年度の進捗としておおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
新規合成化合物の肝細胞癌細胞における代謝経路を明らかにするとともに、その結果を踏まえて化合物の構造を検討し、肝細胞癌に対して特異性高く殺細胞効果を誘導する化合物の合成・開発を行っていく。 具体的には、肝細胞癌細胞におけるICG結合型化合物の滞留性を導くメカニズムに着目して分子生物学的手法を用いた解析を実施する。これまでの研究において、Na(+)/taurocholate cotransporting polypeptide(NTCP)、organic anion-transporting polypeptide (OATP), multidrug resistance p-glycoprotein(MDR)といったタンパク質がICGの輸送に関与することを報告した(Ishizawa T, Hasegawa K, et al. Ann Surg Oncol 2014 ;21:440-448)。本研究計画では、ICGの蓄積するHCC細胞株を用いて、ICGトランスポーターの候補遺伝子として報告されているこれらのタンパク質の発現をin vitroで検討する。同定された遺伝子をHCC細胞株に強制発現、siRNAによるノックダウンを行い、in vitroにおけるICGトランスポーターであることの証明を行う。そして、本研究計画において合成されたICG結合型化合物に関しても同様の検討を実施し、肝細胞癌細胞における当該化合物の輸送・蓄積に関するメカニズムを明らかにする。
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