研究課題/領域番号 |
17H03598
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北尾 洋之 九州大学, 薬学研究院, 教授 (30368617)
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研究分担者 |
飯森 真人 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (20546460)
釣本 敏樹 九州大学, 理学研究院, 教授 (30163885)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 講師 (80325448)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん化学療法 / 複製ストレス / 治療誘導性細胞老化 |
研究実績の概要 |
がん化学療法において、細胞死を伴わなくとも細胞増殖を不可逆的に停止する「治療誘導性細胞老化」と呼ばれる現象が近年注目されている。申請者は、新規抗腫瘍薬FTD/TPIの薬効成分でフッ化チミジンアナログであるトリフルリジン(FTD)が細胞レベルで非常に効率よく細胞老化を誘導することを見出した。前年度の解析から、p53活性化がこの細胞老化誘導に非常に重要な役割を果たしていることが示唆されたため、今年度は、p53欠損モデルがん細胞株を樹立し、FTD及び既存抗腫瘍薬に対する細胞応答過程について、p53野生型の親株との比較検証を行った。 (1)p53欠損がん細胞株樹立 CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用い、ヒト大腸がん細胞株HCT-116のp53遺伝子破壊を行った。2つの相同染色体上のp53遺伝子座が破壊され、機能的にもp53が欠損した細胞株を樹立することに成功した。 (2)p53欠損細胞株のFTD曝露時の細胞応答解析 親株と同様にFTDに曝露した時の細胞応答について解析し、p53欠損株ではFTDによる細胞老化誘導率が有意に減少し、細胞死を起こす細胞が増加することを見出した。M期進行に異常が発生することが予想され、現在検討を続けている。 (3)複製ストレス惹起メカニズム HCT-116細胞を用い、3連4重極質量分析器を用いて、FTD曝露時の細胞内dTTP, FTD3リン酸化型代謝物(FTD-TP)の定量解析を行った。FTD曝露によって、dTTPが減少し、FTD-TPが蓄積することを検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたFTD及び既存抗腫瘍薬による細胞老化誘導過程の追跡とp53の関与について明らかにすることができた。 次年度に向けて、必要な細胞株も樹立することができ、一部解析も開始することができている。 当初の計画通りにおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで主にトリフルリジンを用いて行ってきた実験条件を他剤についての解析にも応用することで、抗腫瘍薬によって引き起こされる細胞老化の生物学的意義に迫っていく。
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