研究実績の概要 |
進行・再発大腸癌に対して治癒を期待できる治療法は未だ確立されていない.その理由の一つとして大腸癌細胞特異的な治療薬が存在しないことが挙げられる. 申請者らは,大腸癌細胞のフコース(単糖類)の要求度が高いことに着目し,フコース結合nanoparticleによる新規治療法を考案した (Kato J, J Natl Cancer Inst 2016).一方,18F-Fluorodeoxyglucose (FDG) -PET検査は,大腸癌の診断に有用であるのみならず,大腸癌細胞のFDGの取り込み率が高い症例では,その予後が不良であることが報告されている.つまり,FDG取り込みが亢進している癌細胞を標的とした治療薬が,大腸癌の治療成績を向上させうる可能性がある.本研究の目的は,FDG取り込みが亢進している大腸癌細胞の細胞特性の解析を行うとともに,FDG修飾抗がん剤による新規大腸癌細胞標的療法を開発することを目的とする. 平成29年度は,大腸癌細胞におけるGLUT1およびHK2の機能をsiRNAを用いてそれぞれの遺伝子をknock-down (KO) することにより,細胞増殖能とFDG-FITCの取り込み率および停滞率の関連性をin vitroで検討した.その結果を踏まえ,平成30年度はFDG修飾抗がん剤(FDG-SN38-FITC)を設計・作製を試みた. しかし、SN38の構造が変化しない適切なリンカーを設計することが困難であり、作製に時間を要した。抗がん剤の分子構造が変化することで抗がん作用が失われる可能性が危惧された。まず、FDGとFITCを結合させ、基礎的検討を行うことを先行させる必要があると考えられ、適切なリンカーを設計し、FDG-FITC試薬を完成させた。
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