研究実績の概要 |
大腸癌細胞特異的な治療薬の開発により、進行・再発大腸癌に対して治癒を期待できる画期的治療戦略を構築できる可能性がある。申請者らは,大腸癌細胞のフコース(単糖類)の要求度が高いことに着目し、フコース結合 nanoparticleによる新規治療法を考案した (Kato J, J Natl Cancer Inst 2016)。一方、18F-Fluorodeoxyglucose (FDG) -PET 検査は、大腸癌の診断に有用であるのみならず、大腸癌細胞のFDGの取り込み率が高い症例では、その予後が不良であることが報告されている。つまり、FDG取り込みが亢進している癌細胞を標的とした治療薬が、大腸癌の治療成績を向上させうる可能性がある。本研究の目的は、FDG取り込みが亢進している大腸癌細胞の細胞特性の解析を行うとともに、FDG修飾抗がん剤による新規大腸癌細胞標的療法を開発することが目的である。 2019年度~2020年度は、最適な方法にてFDGを結合させた抗がん剤または蛍光物質をin vitro, in vivo において腫瘍細胞特異的な送達性ならびに抗腫瘍効果の解析を行った。 in vitroではFDG結合蛍光剤を用いた腫瘍特異的な取り込みを蛍光顕微鏡やflow cytometerで定量的に検討するなどして検討を行った。その結果、FDG結合抗腫瘍薬が腫瘍細胞に取り込まれることを確認した。in vivoでは,担癌マウスモデルを作成し, FDG結合蛍光剤を用いて, in vivo imagingにてFDGの腫瘍への集積を確認した。試薬の生体内での不安定性から、試薬の再作成に時間を要したが、安定性の高い試薬の開発に成功し、in vivoでの検討も可能となった。
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