研究課題
キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法の技術革新と臨床応用は目覚ましい一方、その作用機序の解明が未解決な点など、残された課題も多く存在する。本研究では、革新的イメージングシステムの構築、CAR-T細胞のシグナル伝達経路の可視化、CAR-T細胞のがん細胞傷害機構の解明、細胞内シグナル伝達分子を導入した新たなCARの設計を行い、より高い殺傷機能と容易な活性調節機構をもつ次世代CAR-T細胞の創出を目的とした。抗原提示人工脂質膜を用いた先端的分子イメージング法により、hCD19 CARが腫瘍細胞に発現しているhCD19をリガンドとして認識し、TCR下流のシグナル伝達分子やそのリン酸化タンパク質がリクルート「hCD19 CARマイクロクラスター」としてTCR下流のリン酸化シグナル伝達分子がリクルートするシグナロソームを形成することを明らかにした。コリセプターCD4/CD8を必要とせず、SrcファミリーキナーゼLckのランダムな会合でリン酸化が見られたが、CARマイクロクラスターと同時にTCRマイクロクラスターも観察され、MHCのみ依存しTCRの特異的抗原に寄らなかった。このセルフペプチドの認識がクラスター形成するTCRはCARマイクロクラスターからリン酸化を受け、T細胞全体の活性化を助長することから、セルフペプチドのノン・セルフ化つまり「ネオ・セルフ」抗原としての抗原認識機構、および補助刺激受容体以外のTCRとのクロストークの例であると考えられる。この結果は、TCR下流の細胞内シグナル伝達分子を導入したCAR-T細胞キメラ受容体を作製し、より強力ながん細胞傷害活性や傷害活性の調節が容易でかつ安全な細胞治療を提供できる新規CAR-T細胞の開発基盤となると期待される。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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