研究課題
高等真核生物のゲノムからは大量のノンコーディングRNAが転写されており、そのうち長さが200塩基以上のものは便宜的に長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)と呼ばれているが、その大部分について未だ全く機能解析が行われていない。本研究では、フェノール・クロロホルム処理によってRNAを抽出する際、タンパク質と強固な複合体を形成しているlncRNAの回収量がUV照射後に大きく減少することを利用して、新規機能性lncRNAの候補遺伝子をリスト化することを第一の目標としている。さらに、その生理機能を、ノックアウトマウスやシステマティックな逆遺伝学的解析が可能なメダカを用いて検証することを第二の目標としている。昨年度までの研究において、UVを照射した際に著しい回収量の低下を示す機能性lncRNAの候補遺伝子を複数同定することに成功していた。本年度は変異体の作製を効率よく行うための実験系を研究室内に確立することに集中した。まず、メダカに関しては飼育設備の導入を完了し、毎日受精卵を得られるような体制を整えた。また、CRISPR-Cas9を用いてポリA配列を持ったEGFPをノックインする実験系を確立することができた。proof of principleとしてMalat1遺伝子座にこのカセットをノックインしたメダカをすでに作製済みである。また、マウスに関しては、東海大学の大塚博士によって開発された簡便な変異マウス作製法iGONADの系を導入することに成功した。この手法は卵管に直接CRISPR-Cas9をエレクトロポレーションするため、仮親の用意が必要ない上、効率も良い。この手法を用い、6ヶ月の間に3系統の変異マウスを作製することに成功した。また、ゲノム支援との共同研究により、数百Mbに及ぶ4.5SHクラスター領域を欠失するマウスの作製にも成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
マウスに関してはES細胞を用いた通常のノックアウトマウスを用いて変異マウスを作製する予定であったが、当初は予定していなかったiGONADの実験系を導入することに成功し、当初よりも早く変異マウスを作製することが可能となった。
変異体を効率よく作製する実験系を確立することができたため、すでに昨年度までの研究で同定した、機能性lncRNA候補遺伝子の変異マウスの作製を引き続き進めてゆく。また、すでに作製した変異マウスについて表現型解析を進めてゆく。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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