研究課題
昨年度までに、UV照射をした時にタンパク質に効率よくクロスリンクされることを指標に複数の機能性長鎖ノンコーディングRNA候補遺伝子を同定し、iGONAD法を用いてそれらのノックアウトマウスの作製を進めていた。そのうちの一つ、Rab30asの転写開始点直後にポリA配列を挿入したノックアウトマウスと野生型のマウスと掛け合わせを行ったところ、生殖系列への以降が確認できた。次に、得られたF1マウス同士の掛け合わせを行ってメンデル比を調べたところ、ホモ個体が得られるものの、野生型:ヘテロ個体:ホモ個体の比はその割合は11:25:2であり、ホモ個体の割合が予想値よりも低いことが明らかとなった。また、ノックアウトマウス個体の脳からRNAを抽出し、qRT-PCRでRas30asの発現を調べたところ、野生型と比べて約3%まで減少していることが明らかとなった。今後は今年度確立したiGONAD法を用いた長鎖ノンコーディングRNAのノックアウトマウス作製パイプラインを用いて、より多くのノックアウトマウスの作製を目指す。また、昨年度に作製した4.5SHクラスターのノックアウトマウスの表現型解析を行ったところ、ホモ個体は得られず、着床直後の非常に早い時期に胎生致死になることが明らかとなった。また、4.5SHクラスターの正確な長さを調べるためにパルスフィールドゲル電気泳動を用いたサザンブロット解析を行ったところ、4.2 kbのユニットが約200コピータンデムに並んだ約900 kbのクラスターを形成していることが明らかとなった。昨年度までにメダカに関しても複数の機能性長鎖ノンコーディングRNAの候補遺伝子を同定していたので、CRISPR-Cas9法を用いてノックアウト個体の作製を試みた、その結果、一つの候補遺伝子の変異個体において行動異常が見られることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
ノンコーディングRNAの変異個体で胎生致死になることが知られているのはXistをはじめとする数個の遺伝子しか知られておらず、4.5SHクラスターのノックアウトマウスが胎生致死を示すという我々の結果は、ノンコーディングRNAによる生体制御を考える上で非常に重要な意味を持つ。また、新規ノンコーディングRNAを産生するメダカゲノムの欠損変異で行動異常が見られるという予備的な結果も予想外なものであり、今後の研究の大きな進展が望まれる。
Rab30asに関しては引き続きバッククロスとヘテロ個体同士の掛け合わせを行い、メンデル比に偏りが見られるかどうかを確認する。メンデル比に偏りが見られた場合は、一部の個体が胎生致死を示すことが予想されるので、胎生期の胚を解析し、異常を示すステージを同定する。機能的長鎖ノンコーディングRNAの候補遺伝子はまだ複数残っており、それらの変異マウス及び変異メダカ個体の作製を進める。4.5SHクラスター変異マウスに関しては着床直後に胎生致死となる原因を明らかとするため、異常が見られた胚を回収して遺伝子発現解析を行う。
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RNA
巻: 24 ページ: 1785-1802
10.1261/rna.067611.118
Open Biol.
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