研究実績の概要 |
本研究の目的は1型糖尿病の発症・抑制の機序を明らかにすることである。ヒトの1型糖尿病の発症のしやすさはヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen;HLA)(マウスでは主要組織適合性抗原(Major Histocompatibility Complex, MHC))遺伝子多型と強く関連することが知られており、患者の約9割がDR3-DQA1*05- DQB1*02, DR4-DQA1*03-DQB1*03:02(欧米人), DR9-DQA1*03 -DQB1*03:03, DR4-DQA1*03-DQB1*04 (日本人)などの特定のHLA-DR-DQハプロタイプのいずれかを持つと報告されている。しかし、これらのHLAが1型糖尿病を引き起こすメカニズムは明らかにされていない。そこで本研究では1型糖尿病の動物モデルとして知られるNon-Obese Diabetogenic (NOD)マウスのMHC遺伝子を部分的に改変した変異導入NODマウスを樹立し、病態発症の機序を明らかにする。NODマウスは1型糖尿病を高頻度に自然発症する系統として知られ、NODマウスでの膵島炎発症はMHCクラスII (I-Ag7)と強い関連があることから、NODマウスではヒトの1型糖尿病と類似した機序によって1型糖尿病を発症すると考えられており、モデル動物として適当である。これまでに、NODマウスのMHC遺伝子に変異導入した株を3種類以上樹立した。平成29年度はこれらの変異導入株雌雄各群(約20匹)について糖尿病発症率測定、オフターゲット領域のDNA配列解析、および免疫系の解析を行った。また、新たな変異導入株を作成しライン化を進めている。これまでに得られた成果について現在、論文投稿準備中である。
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