研究課題
これまでに我々は、iPS細胞における点突然変異の蓄積、特に、ゲノムリプログラミングの最初の数分裂の間に点突然変異が生じることを明らかにしてきた。最終年度であるH31年度は、その原因の解明と、更に、変異の少ないiPS細胞を樹立に成功し、本課題の目標を達成すると同時に、これらの成果を論文発表した。通常、DNAに損傷が生じてもそれは修復され、変異は抑制されるが、iPS細胞で観察される多数の変異の存在から、損傷修復機構がゲノムリプログラミング初期に一過性に欠損している可能性が示唆された。そこで、ゲノムリプログラミング中にDNA損傷を発生させ、DNA損傷応答機構解析した。その結果、初期のday 3頃ではG1 arrestが起こらず、チェックポイント異常が明らかになった (day 6では異常は観察されない)。また、その分子機構が、一過性のCyclinD1タンパク質の過剰発現およびRbタンパク質の高リン酸化であることを明らかにした。一方、変異の少ないiPS細胞を樹立するため、親体細胞として、変異を誘発し得る活性酸素種(ROS)の生産が抑えられた細胞を探索し、ヒト臍帯血を赤芽球増殖条件にて培養した画分を同定した。次にこの条件にて培養した細胞を用いてOct4、Sox2、Klf4、c-Myc、Lin28の5つの遺伝子を組み込んだエピゾーマルベクターを導入しiPS細胞を樹立した。4人の臍帯血から20株以上を樹立し、幹細胞マーカーの発現および3胚葉への分化能を確認した14株について、全ゲノムシーケンスによる点突然変異およびINDEL解析を行ったところ、驚くべきことに、それらの変異の数は、それまで報告されていた数の5分の1から10分の1と少ないことが明らかになった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 11 ページ: 197
https://doi.org/10.1038/s41467-019-13830-x