研究課題/領域番号 |
17H03622
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古澤 力 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00372631)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 進化実験 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
近年大きな問題となっている抗生物質耐性菌の出現を抑制するためには、その進化ダイナミクスを理解し、制御する必要がある。そこで本研究では、進化実験で得られた様々な抗生物質耐性の大腸菌株について、その表現型と遺伝子型を定量したデータに基づき、その耐性獲得への進化ダイナミクスを制御する手法を考案する。単独の抗生物質に対する耐性菌の表現型・遺伝子型データから、複数の抗生物質を同時に添加したときの進化ダイナミクスを予測し、進化実験を行うことによって検証する。さらに、抗生物質に限らず様々な環境摂動を与えて進化実験を行い、耐性獲得ダイナミクスに影響を与える摂動のスクリーニングを行う。 平成29年度は、申請者が開発したラボオートメーションを用いた全自動の進化実験システムを用いて得られた、酸・アルカリ・界面活性剤・抗生物質など95種類のストレスに対する耐性大腸菌について、一つのストレスに対する耐性獲得が、他の様々なストレスへの耐性をどのように変化させるかを定量した。結果として、ある一つのストレスへの耐性獲得が、他の様々なストレスへの耐性・感受性を変化させる交差耐性と交差感受性と呼ばれる現象が多くの組み合わせで見出された。こうした交差耐性と交差感受性のデータに基づいて、複数のストレス誘引物質を添加した場合に、それらへの耐性獲得が抑制されると予想される組み合わせのスクリーニングを行い、それらを同時添加した進化実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、複数の環境摂動を与えることにより、進化ダイナミクスを予測・制御する手法を開発することを目的としている。今年度に得られた様々なストレス耐性の間にある交差耐性・感受性のデータは、その予測と制御へ向けて基盤となるデータである。多くの組み合わせで交差耐性・感受性が見出されており、耐性メカニズムの相互作用が十分に密であり、目的している進化の制御が十分に可能であることが示唆された。また、すでにそのデータの解析に基づいて複数のストレス誘引物質を同時添加した進化実験を開始しており、研究は順調に進展をしていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、すでに開始している複数のストレス誘引物質を添加した環境での大腸菌進化実験を継続する。その結果、同時添加により進化ダイナミクスが変化する環境の組み合わせを同定し、それが交差耐性・感受性のデータとどのように対応するかを解析する。また、複数のストレス誘引物質を添加し、さらに進化実験中に複数のストレス耐性能を定量することにより、環境にフィードバック制御を加えた進化実験の手法を考案し、実装する。
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