研究課題
本年度は、NEAT1 lncRNAがクロマチンの3D構造に影響を与えているかを明らかにするために、CREIPR-Cas9ゲノム編集によって作成したNEAT1 KO HAP1細胞株を作成した。野生型細胞とNEAT1 KO細胞株を用いて、遺伝子発現プロファイルを次世代シーケンサーによるRNA-seq解析によって、またクロマチンの3D構造については、サウジアラビアKAUSTのV. Orlando教授のグループとの共同研究によるHiC解析を実施した。その結果RNA-seq解析では、遺伝子発現が上昇及び減少した遺伝子群が検出された。一方、HiC解析によって、特定のクロマチン座位における3D構造が、NEAT1 KO株において著しく変化していることが検出された。現在、クロマチン構造変化と遺伝子発現変化の関連について検証を行なっている。一方で、最近NEAT1 lncRNAによるパラスペックル形成は、液体相転移を伴うことが実施者のグループで示され、こうした液体相転移と遺伝子発現制御との関連について注目を集めている。本年度は、NEAT1の中の液体相転移誘導に必要な領域を同定し、そこに結合するタンパク質が明らかになったので、今後そのタンパク質と標的遺伝子との関係を解析する予定である。最後に、今後のクロマチン3D構造の動的変化を追跡するために、NEAT1の発現に影響を与えるシグナルに注目し、現在特定のシグナルを作用させた場合のNEAT1発現変化、パラスペックル構造の伸長、遺伝子発現変化またはクロマチン3D構造変化の一連の流れを追跡できる系を開発中である。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、ゲノム編集によって作成したNEAT1 KO細胞株と野生型株を用いて、遺伝子発現プロファイルとクロマチン3D構造プロファイルを取得し、NEAT1の有無によって双方が著しく変動することを明らかにした。これによって、NEAT1 lncRNAの機能を指標に、その分子メカニズムを明らかにする足がかりができたと考えられる。特にクロマチン3D構造解析は、KAUSTのOrlando教授との国際共同研究にて実施され、予想以上の成果をあげていることも高く評価できる。
今年度明らかになったNEAT1の標的と考えられる遺伝子発現及びクロマチン3D構造構築の相互の関連性を明らかにし、さらにNEAT1の部分欠失変異細胞株を用いて、これらの制御にNEAT1のどの領域が関与しているかを明らかにする。一方で、動的なクロマチン3D構造変化を追跡するために検討しているシグナルに依存したパラスペックル依存的な遺伝子発現系をセットアップして、シグナルが作用した際のパラスペックル内の構造変化及びNEAT1上の相互作用因子の挙動変化を検出することを目指す。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 10件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
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