研究課題/領域番号 |
17H03632
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石津 大嗣 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40574588)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | piRNA / Armitage / RNAサイレンシング |
研究実績の概要 |
piRNAは、相補的な配列を持つ遺伝子の発現を抑制する生殖細胞特異的な機能性小分子RNAである。申請者は、ショウジョウバエを用いたpiRNA生合成因子探索の結果、ATP依存性RNAヘリカーゼであるArmitage(Armi)を同定した。ArmiはpiRNA生合成過程の中間体に結合することを明らかにしたが、その詳細な機能には不明な点が多い。本研究では、これまで詳細な解析がされていなかったpiRNA生合成遷移過程の中間体を捉えるためにArmiが結合するpiRNA中間体の配列解析手法を確立し、生合成機構の全容解明を目指す。また、piRNA生合成に関与する因子群が関与するpiRNA生合成の分子メカニズムを解明する。 これまでに、Armiに結合したpiRNA中間体の5′末端から24〜30番目の塩基をZucが切断することにより、成熟型piRNAが生成されるという仮説が立てられている。しかし、CLIP法による解析ではその原理上、Armiが結合している部位は分かるものの、そのRNAの長さや末端配列の情報などは失われてしまう。そのため、ArmiがZucの基質となる最終段階の中間体に結合しているかどうかに関する直接的証明はされていない。本年度は、従来のCLIP法では失われてしまう5′末端配列を同定する手法であるCLIP followed by parallel analysis of RNA end(CLIP-PARE)法を開発し、Armiに結合するRNAの5'末端解析を行った。その結果、ArmiがpiRNA生合成過程の中間体に結合することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA結合タンパク質に結合するRNAの5'末端を解析する新たな手法であるCLIPPARE法の開発に成功し、当初の計画通り、Armi結合RNAの5'末端解析から、ArmiがpiRNA生合成過程の中間体に結合することを明らかにした。さらに、この解析から、これまでpiRNA生合成に関与することが知られていたリボヌクレアーゼであるZucの他に未知のリボヌクレアーゼが関与することが示唆され、piRNA生合成経路の新たなモデルを提唱するに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
CLIPPARE法の確立により、これまで未知であったpiRNA生合成過程の中間体に関する情報が得られるようになった。今後、Armiの他にpiRNA生合成経路に必須のRNA結合タンパク質について同様の解析を行うことで、各因子が生合成過程のどのような段階で機能しているのかを明らかにする。 これまでの解析から、piRNA生合成経路において未知のリボヌクレアーゼによって生成されるpiRNA中間体は、5'末端側がPiwiタンパク質にロードされ、3'末端側をエンドリボヌクレアーゼZucchiniが切断することで、成熟型piRNAが形成される と考えられている。ZucをノックダウンしたOSCを用いて、Piwiに対するCLIP法を行うことで、PiwiにpiRNA中間体がロードされることを検証する。
|