研究課題/領域番号 |
17H03634
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石黒 啓一郎 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (30508114)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
本研究では体細胞型と減数分裂型の細胞周期の制御機構の違いを見出すことを課題とする。生殖細胞は通常の体細胞と同様の細 胞周期の機構を巧みに転用しながらも、染色体構造に減数分裂特異性が与えられるようにプログラムされている。細胞周期の調 節は減数分裂仕様に大幅に特殊化されていると推測されるが、この分子機構はほとんど理解されていない。本課題では細胞周期 の調節という観点から理解することを目指している。体細胞で見られる細胞周期調節が各ステージにおける染色体動態に決定的 な役割を果たしていることからも明白であるように、減数分裂における細胞周期調節の観点から染色体制御を捉えることが重要 となろう。本研究では、細胞周期の進行に重要とされるE3ユビキチンリガーゼ複合体の減数分裂の素過程における働きを基質・ 調節の観点から研究する。これにより減数第一分裂前期における染色体構造の制御を細胞周期の観点から検討する。 本研究では、精製用の3xFLAG-HAタグをSkp1遺 伝子座およびAPC2遺伝子座のlast coding exonに付加したノックインマウスを作製する。これらのノックインマウスの精巣から SCFおよびAPC/c複合体を精製した後、質量分析法により会合する因子を同定する。コントロールとしてこれらのノックインマウ スの元となったG2期の組換えES細胞から精製を行って体細胞由来の基質と比較する。 減数第一分裂は体細胞のcanonicalなcell cycleを転用したものと推定されるため、両者の間でユビキチン化を受ける基質に は概ねoverlapがあると予想されるが、減数第一分裂に特異的な基質が見られないか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
減数第一分裂前期は、通常の体細胞の細胞周期のG2期に相当する。体細胞の場合、SCFおよびAnaphase promoting complex(APC/ c)と呼ばれる2つのE3ユビキチンリガーゼ複合体は細胞周期の進行に重要な基質を分解へと導くが知られている。申請者の予備 解析から、これらのE3ユビキチンリガーゼ複合体を体細胞の培養細胞から精製してくると、それらの調節サブユニットや基質結 合サブユニットと共にユビキチン化の基質が会合してくることがわかっている。本研究では、精製用の3xFLAG-HAタグをSkp1遺 伝子座およびAPC2遺伝子座のlast coding exonに付加したノックインマウスを作製した。現在キメラマウスからgerm line transmissionを確認できたので、精巣亜からのタンパク質複合体精製に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ノックインマウスの精巣から SCFおよびAPC/c複合体を精製した後、質量分析法により会合する因子を同定する。コントロールとしてこれらのノックインマウ スの元となったG2期の組換えES細胞から精製を行って体細胞由来の基質と比較する。 減数第一分裂は体細胞のcanonicalなcell cycleを転用したものと推定されるため、両者の間でユビキチン化を受ける基質に は概ねoverlapがあると予想されるが、減数第一分裂に特異的な基質が見られないか検討する。 さらに体細胞には見られず減数分裂に特異的な調節サブユニットが見られないか検討する。出芽酵母では減数分裂に特異的な 調節サブユニットが報告されており、高等動物でも同様の因子の同定が期待される。候補となる因子のうち減数分裂期に特異的 な発現を示すものについては初期胚へのCrispr gRNA/Cas9の直接導入によるKOの検定により、生殖細胞形成不全を示すものが見 られないか検討を行う。特に細胞周期の進行に特異的に表現型を示すことが期待されるので、精母細胞および卵母細胞の減数第 一分裂のmeiotic prophaseが異常に短縮してprematureに1回目の分裂に進行してしまう表現型が見られないか、減数第一分裂か ら第二分裂にかけて中途停止を示すか否かに留意する。
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