研究課題
本研究では体細胞型と減数分裂型の細胞周期の制御機構の違いを見出すことを課題とする。生殖細胞は通常の体細胞と同様の細胞周期の機構を巧みに転用しながらも、染色体構造に減数分裂特異性が与えられるようにプログラムされている。細胞周期の調節は減数分裂仕様に大幅に特殊化されていると推測されるが、この 分子機構はほとんど理解されていない。本課題では細胞周期の調節という観点から理解することを目指している。体細胞で見られる細胞周期調節が各ステージに おける染色体動態に決定的 な役割を果たしていることからも明白であるように、減数分裂における細胞周期調節の観点から染色体制御を捉えることが重要 とな ろう。本研究では、細胞周期の進行に重要とされるE3ユビキチンリガーゼ複合体の減数分裂の素過程における働きを基質・ 調節の観点から研究する。これにより 減数第一分裂前期における染色体構造の制御を細胞周期の観点から検討した。本研究では、精製用の3xFLAG-HAタグをSkp1遺 伝子座およびAPC2遺伝子座のlast coding exonに付加したノックインマウスを作製する。これらのノックインマウ スの精巣から SCFおよびAPC/c複合体を精製した後、質量分析法により会合する因子を同定した。その結果、SCF E3ユビキチンリガーゼ複合体の新規の基質認識サブユニットとその基質タンパク質が同定された。この新規基質認識サブユニットのKOマウスを用いて、生殖細胞形成における表現型を解析する。
1: 当初の計画以上に進展している
減数第一分裂前期は、通常の体細胞の細胞周期のG2期に相当する。体細胞の場合、SCFおよびAnaphase promoting complex(APC/ c)と呼ばれる2つのE3ユビキチン リガーゼ複合体は細胞周期の進行に重要な基質を分解へと導くが知られている。申請者の解析から、これらのE3ユビキチンリガーゼ複合体を体細胞の培養細 胞から精製してくると、それらの調節サブユニットや基質結 合サブユニットと共にユビキチン化の基質が会合してくることがわかっている。本研究では、精製用 の3xFLAG-HAタグをSkp1遺 伝子座およびAPC2遺伝子座のlast coding exonに付加したノックインマウスを作製し精巣からのタンパク質複合体精製を行った。その結果、SCF E3ユビキチンリガーゼ複合体の新規の基質認識サブユニットを同定した。またその基質と思われるタンパクを複数同定した。
減数第一分裂は体細胞のcanonicalなcell cycleを転用したものと推定される ため、両者の間でユビキチン化を受ける基質に は概ねoverlapがあると予想されるが、減数第一分裂に特異的な基質が見られないか検討する。 さらに体細胞に は見られず減数分裂に特異的な調節サブユニットが見られないか検討する。出芽酵母では減数分裂に特異的な 調節サブユニットが報告されており、高等動物でも 同様の因子の同定が期待される。今回新規に同定されたSCF E3ユビキチンリガーゼ複合体の基質認識サブユニット遺伝子をゲノム編集により破壊し、精巣における表現型を解析し生殖細胞形成不全を示すものが見られないか検討を行う。特に細胞周期の進行に特異的に表現型を示すことが期待されるので、精母細胞および卵母細胞 の減数第 一分裂のmeiotic prophaseが異常に短縮してprematureに1回目の分裂に進行してしまう表現型が見られないか、減数第一分裂か ら第二分裂にかけて中 途停止を示すか否かに留意する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/chromosome-biology/