研究課題
本研究においては、mRNAポリA鎖分解による遺伝子発現の負の制御に加えて、ポリA鎖伸長による正の遺伝子発現制御が広く体細胞において機能していることを検証し、その普遍的分子機構を解明することを目的としている。これまでの研究において研究代表者らは、統合失調症関連因子QKI-7、La-related protein (LARP)、Musashi、 Interleukin Enhancer-binding factor 3 (ILF3)などのRNA結合タンパク質がポリA鎖伸長を担う特異性因子として機能していることを明らかにしてきたが、今回さらに脊髄小脳変性症の原因因子Ataxin-2がポリA鎖伸長にはたらく特異性因子として機能することを証明した。研究代表者らによって独自に開発した、ポリA鎖分解酵素を阻害した条件下でのパルスチェース解析法を用いることで、Ataxin-2はmRNA分解の抑制ではなく、ポリA鎖伸長を引き起こすことを完全証明した。また、Ataxin-2と共にはたらくポリAポリメラーゼとしてPAPD4を同定し、標的mRNA上でポリA鎖に特異的に結合するポリA鎖結合タンパク質とともにポリA鎖伸長因子マシナリーを形成することで、標的mRNAであるサイクリンDやTDP-43などのmRNAのポリA鎖伸長とその翻訳活性化を促進することを証明した。『mRNAポリA鎖伸長による正の遺伝子発現制御の普遍的分子機構』がほぼ明らかとなり、本研究の当初目的が達成されつつある。
2: おおむね順調に進展している
昨年度同定したLARP1やILF3に加えて、さらに7番目のポリA鎖伸長特異性因子としてAtaxin-2を同定し、そのメカニズムの詳細を解明することができたことで、本研究で目的とするポリA鎖伸長の普遍的分子機構を解明することに大きく前進した点を挙げることができる。
研究は計画通りに進展しており、最終年度である来年度も当初研究計画に準じて進めていく。
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