研究課題/領域番号 |
17H03637
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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研究分担者 |
加藤 公児 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (30452428)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Cys-tRNA(Cys) / transsulfursome / アミルアシルtRNA合成 / 間接合成経路 / X線結晶解析 / クライオ電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
古細菌におけるCys-tRNA(Cys) の生合成は,2 つの酵素,SepRS とSepCysS が,それぞれ触媒する2段階の反応から成り立っている.申請者らは,この反応を推進するためには,第3のタンパク質SepCysE がSepRS とSepCysS をつないで3者複合体(transsulfursome)を形成することが必須であることを明らかにした.本研究では,そのtranssulfursome とtRNA から成る4者複合体の構造解析により,transsulfursomeが2つのリンカーを利用して動的なtRNAをプロセスする分子機構を明らかにする. そのために,H29年度には,まず,各反応段階を反映するtranssulfursomeとtRNAの変異体作製,および得られた成果をまとめて投稿することに集中した.その結果,論文をNature Communicationに掲載することができた.変異体の作製について,SepCysEのlinker1とlinker2を短くした変異体以外に,当初の計画により最も安定な,RNAと結合できないSepCysSの変異体を見つけて,作製し,tRNAがSepRSのみ結合する第1段階反応状態でのtranssulfursome-tRNA複合体調製を試みた.また,第2段階反応状態でのtranssulfursome-tRNA複合体調製を作製するため,SepRS変異体の調製の問題、およびSepCysEとの結合への影響を考え,アンチコドンを認識するSepRSの残基変異の変わりに,tRNAの変異体を作ることにした.調製できた各種のtranssulfursome-tRNAの変異体を用いて,放射光施設PFにて, SEC-SAXS測定した結果,二つの段階の反応状態を反映するtranssulfursometとtRNAの回折曲線の予想している違いが見られなく,今回構築した第1段階反応状態でのtranssulfursomet-tRNA複合体のサンプルには,様々なコンフォーメーションが混合している可能性が示唆されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年は,各反応段階でのtranssulfursomeとtRNA複合体を得るために,SepRS,SepCysS,SepCysE,tRNAの変異を作製し,transsulfursomeとtRNAの結合強度を解析しながら,変異体の再設計・調製を繰り返した.その結果,SepCysEのlinker1とlinker2を短くした変異体の以外に,目的に応じる3類のタンパク質の変異体と1種類のtRNA変異体を得ることができた.それらのサンプルのSEC-SAXS測定により結合状態も評価し、クライオEMの条件のスクリーニングも始めた.さらに、これまで得られた結果をまとめてNature Communicationに論文投稿し、11月に掲載することができた.
以上の結果から、本研究はおおむねに順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の実験結果から、分かった問題を解決しながら,申請当初に計画した実験を実施する. 1.各反応段階を反映する変異体の作製:平成29年度の実験結果から分かった各反応段階でのtRNA結合の制御について,今年度中に結合の確認方法を検討することによって,改善する.また,平成29年度のサンプル大量調製と結合実験の結果に応じて,必要であれば,transsulfursomeの変異体を作り直す.また,結晶化と構造解析も平成29 年度と同様に行う. 2.各反応状態のtranssulfursome, transsulfursome-tRNA複合体の結晶構造:平成29年に引き続き,調製できた各反応状態のtranssulfursome-tRNA複合体の結晶化を行う.結晶が得られたら,結晶化条件を最適化し,X線回折実験を行い,構造解析へ進める. 3.Cryo-EMによる各反応状態のtranssulfursomeとtRNACys複合体の構造解析:調製できた各反応状態のtranssulfursome, transsulfursome-tRNA複合体のクライオ電子顕微鏡解析へ進める.予備実験として,まず,当学科に既存の共用透過型電子顕微鏡(Hitachi社製 H7650)を用いて,硝酸ウランを用いたネガティブ染色法によりサンプルの確認を行う.クライオ電子顕微鏡に適用できるサンプルの確認ができたら,以後のクライオ電子顕微鏡の実験はドイツのMaxPlanck研究所で行う.凍結による悪影響を考慮し,試料は凍結状態と溶液状態の2種類の状態で運搬する.また,同時に,国内の電顕施設(大阪大学蛋白質研究所や、放射光施設PF、沖縄科学技術大学院大学OIST)の利用視野に入れ,クライオ電子顕微鏡解析のスクリーニングを行う.
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