研究課題/領域番号 |
17H03638
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
村田 武士 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80415322)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | V-ATPase / 分子モーター / 構造解析 |
研究実績の概要 |
V型ATPaseは、触媒頭部(A3B3複合体)でATPを加水分解し、軸部分の回転エネルギー変換を介してイオンを輸送するナノ分子モーター/イオンポンプである。我々は、腸球菌A3B3複合体の結晶構造を明らかにし、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)によりA3B3複合体がATP依存に一方向へ回転運動することを見出した。そこで本研究では、A3B3複合体が一方向に回転運動する分子機構の解明を目的に、各種ヌクレオチド存在下でのA3B3複合体のX線結晶構造解析、生化学的解析、高速AFM観測を遂行する。以下に当該年度の研究成果を記載した。 1:各種ヌクレオチド存在下でのA3B3複合体のX線結晶構造解析---当該年度の研究によりADP結合型A3B3複合体のX線結晶構造決定に成功した。また、ヌクレオチド非結合A3B3複合体の結晶にADP+リン酸アナログを長時間ソーキングし、結晶構造解析を行った。しかし、ソーキングによる分解能の低下により、構造決定はできなかった。 2:各種条件下でのA3B3複合体の生化学的解析---各種条件下でのA3B3複合体のATP加水分解活性を調べた。ATP濃度依存性を詳細に調べた結果、2つ以上のKmが存在することが明らかになった。また、ADPとリン酸による阻害効果について明らかにした。 3:各種条件下でのA3B3複合体の高速AFM観察(金沢大学、名古屋大学との共同研究)---上記の生化学的解析で得られたATPに対する親和性を指標に、各種ATP濃度に依存したA3B3複合体のダイナミクスを観察した。 4:A3B3複合体の重要残基変異体の構造機能解析---N末ドメインやATP結合部位のアミノ酸置換体を作製し、A3B3複合体の構造形成や構造変化に重要と考えられる残基を同定した。今後は、得られた変異体の複合体形成能や基質結合能、ATPase活性への影響を詳細に調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、ADP結合型A3B3複合体の結晶構造の決定、各種条件下でのA3B3複合体のATP加水分解活性測定、各種ATP濃度に依存したA3B3複合体のダイナミクス観察、A3B3複合体の構造形成や構造変化に重要と考えられる残基の同定に成功した。このため予定通り順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、各研究項目を継続する。当該年度の研究により、A3B3複合体結晶へのADP+リン酸アナログのソーキングにより、分解能低下が観測された。今後は、最適条件下でADP+リン酸アナログとA3B3複合体を混合し、共結晶化スクリーニングを行う。良質の結晶が得られしだい、X線結晶構造解析を行う。
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