研究課題
真核生物由来MATEに関しては,昨年度、シロイヌナズナ由来MATE輸送体AtDTX14の外向き開状態の構造を2.6オングストローム分解能で決定し、構造に基づいた変異体解析を行い、輸送機構を検証した。以上の結果は、Nature Communications誌に掲載された。さらに、真核生物由来MATEに関して、構造に基づいたMDシミュレーションを行った。外向き開状態から、内向き開状態への構造変化メカニズムを調べるために、内向き開状態のモデル構造をホモログである脂質フリッペースMOPの構造をもとにモデリングし、シミュレーションを行った。数百ナノ秒程度のシミュレーションでは自発的には構造変化が見られなかったため、Targeted MDを用いて力をかけたうえで構造変化のパスウェイの検討を行っている。細胞外側のN-bundleとC-bundle側のインターフェイスに力をかけ、結晶構造で見られた距離から、モデル構造に対応する距離まで開くように大きなひずみなしに構造変化がシミュレーションできることが分かった。現在、構造変化の自由エネルギー障壁とH+結合による変化を解明すべく計算を進めている。一方で、真正細菌由来のMATEについても構造解析を行った。VcmNは病原菌ビブリオ由来のMATEであるが、すでに構造解析されている真正細菌由来MATEが属するNorMサブファミリーとは異なり、我々のグループで構造解析を行った古細菌由来PfMATEと同じDinFサブファミリーに属する。我々は、DinFの輸送メカニズムとしてH+駆動力依存的に膜貫通ヘリックスTM1が折れ曲がることで基質を排出するメカニズムを提唱していたが、海外のグループから異論が出されていた。しかしながら、本構造解析の結果からは、細菌由来DinFであるVcmNも、PfMATE同様のH+駆動力依存的なTM1折れ曲がりにより基質が排出されることが示唆され、我々の提唱したメカニズムの正しさが古細菌以外の生物においても正しいことが実証される形となった。
1: 当初の計画以上に進展している
植物由来MATEに加え、新規の細菌由来MATEについても論文を公表し、予定通り計画が進んでいるといえる。さらに、MATEの構造変化メカニズムを解析するためのMDシミュレーションも進めており、予備的な結果が得られている.
今後,哺乳類由来MATEに関しては,構造解析可能なレベルの量・純度・安定性を有する発現系の網羅的探索と結晶化スクリーニングをすすめる.一方で、植物MATEについても、基質複合体の構造が依然得られていないため、今後、いくつかの既知の基質について複合体の結晶化を試み、構造解析を進める。また、MATEのMDシミュレーションをさらに進め、構造変化メカニズムをあきらかにしていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件)
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