本研究では、世界最高感度のNMR装置群と独自開発の自動構造計算ソフトを駆使し、従来の分子量上限を超える分子量5万の蛋白質のNMR構造を「全自動」で決定するシステムの構築を目指している。具体的には、研究代表者らが開発中の全自動NMR構造解析プラットフォームMagROと独自のアミノ酸選択標識技術、既存のメチル基選択的軽水素標識等を駆使して分子量5万の花成ホルモン受容体の構造解析を行い、高分子量蛋白質のための全自動NMR構造解析システムの開発に取り組んだ。 平成29年度は、(1)NMR統合解析プラットフォームMagROの開発、(2)メチル基に特化したNMRデータ取得法の確立、(3)メチル基に特化した全自動NMR構造解析ルーチンの開発、に取り組む。本年の特筆すべき成果として、150残基程度の小さな蛋白質に適用可能な全自動NMR構造解析システムの開発が挙げられる。特に機械学習技術を導入し、NMR構造決定の専門家と同程度以上の構造決定精度を達成した点は驚くべき成果である。また、メチル基に特化したNMRデータ取得法として、1H-1H-13Cの3次元NMRより1H-13C-13Cの3次元NMRの方が優れていることを見出した。さらに、これらのデータを解析できるメチル基に特化した全自動NMR構造解析ルーチンの検討も進めた。
|