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2017 年度 実績報告書

ヒドロゲナーゼ成熟化の分子機構に関する構造生物学研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H03642
研究機関京都大学

研究代表者

三木 邦夫  京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (10116105)

研究分担者 藤橋 雅宏  京都大学, 理学研究科, 助教 (10397581)
渡部 聡  東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50432357)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード構造生物学 / X線結晶解析 / 成熟化タンパク質 / ヒドロゲナーゼ / 構造機能相関
研究実績の概要

超好熱性アーキアT. kodakarensis由来のヒドロゲナーゼ成熟化タンパク質の構造・機能解析を行った.
ヒドロゲナーゼへのNi原子組み込み機構解明のため,Niの組み込みに関わるHypAとヒドロゲナーゼ大サブユニットHyhLとの複合体の結晶化,構造解析を行った.HypA-HyhL複合体の調製法はすでに確立されており,予備的な結晶も得られていた.2種の結晶は(空間群C222およびP23)4Å分解能を超える回折を示していたが,さらに高い分解能の結晶を得るため,試料調製および結晶化条件の最適化を行い,それぞれの結晶系で3.5Å分解能を超える回折を与える結晶を得た.放射光X線で測定した回折データに分子置換法を適用し, 3.3Å分解能でR値およそ30%にまで精密化を行った.HyhL-HypA複合体の結晶構造では対応する構造からのいくつかの変化が見られた.この複合体の構造から,[NiFe]ヒドロゲナーゼの成熟化過程において,活性部位へのNi挿入がHyhLのNおよびC末端の空間上の再配置を引き起こすことが示唆された.
ヒドロゲナーゼへのFe原子組み込み機構解明のため,Feの組み込みに関わるHypCとHyhLとの複合体の調製した.結晶が得られたがX線の回折は観察できなかった.
ヒドロゲナーゼ成熟化後の切断機構を解明するため,[NiFe]クラスターが組み込まれたHyhLの調製に取り組んだ.嫌気チェンバーを用いて菌体の大量培養を行ったが,HyhL(pre-HyhL)はほとんど検出できなかった.新たに,このアーキアに存在するもう一つの成熟化プロテアーゼHycI(主に膜結合性ヒドロゲナーゼ(大サブユニット)MbhLに作用するが,HyhLに対しても触媒作用がある)を構造解析した.HycIを結晶化して,放射光X線を用いて1.6Å分解能の回折データを測定し,R値20.6%まで精密化した

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒドロゲナーゼへのNi原子組み込み機構解明においては,HypA-HyhL複合体について,その複合体化が困難な対象であるにもかかわらず結晶が得られ,およそ3.3Å分解能での構造解析に成功した.今後,さらなる分解能の向上や複合体構造の詳細な検証を行うことが必要であるが,この構造決定はHypA-HyhL複合体での初めての成果であり,ヒドロゲナーゼへのNi原子組み込み機構の解明に大きく貢献するものと思われる.
ヒドロゲナーゼへのFe原子組み込み機構解明において,HypC-HyhL複合体の調製ならびに結晶化はまだ達成できていないが,当初から困難が予想された研究対象であり,今後も実験状況を適切に判断して今後の指針を検討することが必要である.
ヒドロゲナーゼ成熟化後の切断機構の解明については,[NiFe]クラスターが組み込まれたヒドロゲナーゼ大サブユニットHyhL(pre-HyhL)の調製を継続している.新たに,T. kodakarensisに存在するもう一つの成熟化プロテアーゼHycIの構造解析に成功した.HycIは主に膜結合性ヒドロゲナーゼ(大サブユニット)MbhLに作用するが,HyhLに対しても触媒作用があるためことが分かったため構造解析の対象とした.放射光X線を用いて1.6Å分解能の結晶構造が得られた.HycIの全体構造は,HyhLに作用する成熟化プロテアーゼHybDに類似しているが,基質を認識すると思われるクレフトに存在するループ構造が長くなっており,これが触媒作用の違いに関係する可能性があるという興味深い知見が得られた.

今後の研究の推進方策

HyhL-HypA複合体について,これまでに得られている結晶構造から,HyhLとHypAの相互作用の詳細をさらに検討する.また,得られている他の複合体の結晶構造を参照して,HyhL,HypA,HypB間の相互作用や成熟化前後のHyhLの構造変化を検証する.それらによって,ヒドロゲナーゼへのNi原子組み込みによる成熟化機構を検討する.また,HyhL-HypA複合体結晶の分解能の向上を目指して,結晶化条件の検討をさらに継続して,より高い精度での複合体構造の決定を目指す.
HyhL-HypC複合体について,これまでに得られている結晶からはX線の回折像が得られなかったため,新たな発現系構築を含めた調製方法の検討,結晶化条件の再検討等を行い,良好なHyhL-HypC複合体結晶の作製を行う.
ヒドロゲナーゼ成熟化後の切断機構解明について,HyhL(pre-HyhL)の調製条件の検討を行う.HyhLの発現量の向上を目指して.高発現プロモーターを組み込んだT. kodakarensis菌体の作製を試みる.
さらに,これまでに蓄積されている成熟化タンパク質群の構造生物学的知見を総括して,金属原子取り込みならびにヒドロゲナーゼ成熟化の分子機構の全体像を明らかにする.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Structure of a [NiFe] Hydrogenase Maturation Protease HycI Provides Insights into Its Substrate Selectivity2018

    • 著者名/発表者名
      S. Kwon, Y. Nishitani, Y, Hirao, T. Kanai, H. Atomi, and K. Miki
    • 雑誌名

      Biochim. Biophys. Res. Commun.

      巻: 492 ページ: 782-788

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.03.058. Epub 2018 Mar 15

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Crystal Structures of a [NiFe] Hydrogenase Large Subunit HyhL in an Immature State in Complex with a Ni Chaperone HypA2018

    • 著者名/発表者名
      S. Kwon, S. Watanabe, Y. Nishitani, T. Kawashima, T. Kanai, H. Atomi, and K. Miki
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: 115 ページ: 7045-7050

    • DOI

      10.1073/pnas.1801955115. Epub 2018 Jun 18

    • 査読あり
  • [学会発表] Structures of a large subunit HyhL in complex with a Ni chaperone HypA reveal a key checkpoint for the [NiFe] hydrogenase maturation2018

    • 著者名/発表者名
      Sunghark Kwon,渡部 聡,西谷優一,河島拓未,金井 保,跡見晴幸,三木邦夫
    • 学会等名
      第18回日本蛋白質科学会年会,新潟市
  • [学会発表] 構造生物学から生物構造化学にいたるタンパク質結晶学の展開2018

    • 著者名/発表者名
      三木邦夫
    • 学会等名
      日本結晶学会2018年度年会,東京都目黒区
    • 招待講演
  • [学会発表] [NiFe]ヒドロゲナーゼ成熟化の分子機構:大サブユニットHyhLとNiシャペロンタンパク質HypAとの複合体の結晶構造2018

    • 著者名/発表者名
      Sunghark Kwon,渡部 聡,西谷優一,河島拓未,金井 保,跡見晴幸,三木邦夫
    • 学会等名
      日本結晶学会2018年度年会,東京都目黒区
  • [学会発表] Recent Topics on Metalloprotein Crystallography2017

    • 著者名/発表者名
      K. Miki
    • 学会等名
      SYSU & HKU Symposium on Bioinorganic Chemistry, SunYat-Sen University, Guangzhou, China
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] [NiFe]ヒドロゲナーゼ大サブユニットと成熟化タンパク質 HypA との複合体のX線結晶構造解析2017

    • 著者名/発表者名
      Sunghark Kwon,渡部 聡,西谷優一,河島拓未,金井 保,跡見晴幸,三木邦夫
    • 学会等名
      日本結晶学会2017年度年会,広島市
  • [学会発表] [NiFe]ヒドロゲナーゼと成熟化因子との複合体の結晶学的研究2017

    • 著者名/発表者名
      西谷優一,瀧口あさひ,石原和樹,河島拓未,渡部 聡,金井 保,跡見晴幸,三木邦夫
    • 学会等名
      日本結晶学会2017年度年会,広島市

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公開日: 2019-12-27  

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