本研究の目的は、緑色蛍光タンパク質(GFP)について、超高分解能X線電荷密度解析および中性子線結晶構造解析をおこない、外殻電子の分布や原子の電荷、水素原子位置、分極状態を決定して実験的に決定した微細な構造情報から発光機構を解明することである。中性子線解析では、軽水素の存在によるS/Nの低下の影響を低減するために、結晶の重水置換や完全重水素化タンパク質の使用がおこなわれているが、これらの処置によるタンパク質の構造や機能への影響を詳細に調べるために、吸収および蛍光スペクトルを広範囲のpH/pDで測定した。また、重水置換した結晶および完全重水素化GFPの結晶から、高分解能(0.8~0.9 Å)のX線回折データを収集して構造解析を実施した。軽水素のみからなる通常のGFPの構造と比較することで、pH/pDによっては発光部位近傍にあるヒスチジン残基のプロトン化状態に差異が見られることが判明した。また、中性子線回折データを収集して構造解析を開始することができた。
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