研究課題
現在の地球に棲息する光合成生物の内、水を電子源として酸素を発生しているものは、すべて、水分解・酸素発生触媒としてMn4Caクラスターを内包した光化学系II複合体(PSII)を持っている。Mn4Caクラスターは20~30億年前に出現したらん藻に既に見られ、その後の生物進化の長い歴史を経てもまったく変わっていない。Mn4Caクラスターには、生物界の触媒として唯一生き残ることができた理由が隠されているはずである。本研究では、本来Mn4Caクラスターの「ハードな」金属であるMn原子が混合原子価状態をとることで、「ソフトな」特性を獲得して触媒として機能しているとする作業仮説をたて、その検証を目標としてきた。実際には以下の手順に従ってPSIIのX線結晶構造解析に多波長異常分散法の手法を適用し、Mn4Caクラスターの4個のMn原子の価数を実測した。(1) 高分解能で同型性の高い結晶を多数準備して、少ないX線照射量での回折実験を可能にし、Mn原子のX線還元を無視できる程度に抑えた。(2) 同様に多数のPSII結晶を試料として、少ないX線照射量でMn-K吸収端スペクトルを測定し、回折実験を行うためのX線波長を決定した。(3) 設定した吸収端内の3波長と吸収端前後の2波長で回折強度を測定した(その際、吸収端より離れた1.80オングストロームでの回折強度測定も合わせて行い、各データを規格化するために利用した)。(4) 合計10種類の回折強度データに対して独立に構造解析を行った。(5) 得られた構造から計算される位相を用いて異常分散差の電子密度図を求め、各Mn原子に対するピーク高さから、それぞれの価数を決定した。(6) 得られた結果をもとに、Mn4Caクラスターの触媒機構についてした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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