光合成の初発過程を担う光化学II(PSII)は、その酸素発生錯合体(Mn4Caクラスター)で水を分解して酸素を発生させている。本研究では、Mn原子の異常分散効果を利用した結晶構造解析を行い、Mn4Caクラスターに含まれるMn1からMn4までのMn原子の価数分布を決定した。その結果、PSIIの結晶の非対称単位には、Mn1の価数がIII価とII価と異なる2種類のMn4Caクラスターが共存していることが判明した。KokサイクルモデルのS1状態とS0状態に対応した価数分布をもとに、水分解・酸素発生反応の全体にわたる酸化還元電位の変化を推定してPSIIの新しい反応機構を提案した。
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