研究実績の概要 |
新開発の独自手法を用いて,ジアシルグリセロール(DG)キナーゼ(DGK)のα, δ, ηアイソザイムが利用するDG分子種は,従来の定説に反し「ホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転とは独立し,それぞれが異なる脂肪酸を利用する未知の経路群」により供給されることを示した.しかし,それらの経路の構成因子や分子マシナリーは未だ不明な点が多いので,DGKα, δ, ηの基質DGの産生系や産生産物ホスファチジン酸(PA)の標的の同定を含め解明することを目的とした.今年度は以下の成果が得られた. 1.DGKαが癌細胞において産生するPA分子種を明らかにした(投稿準備中).2.DGKαの高次構造を決定するための準備として,可溶性モノマーの酵素を高収量で生成することに成功した(投稿中).3.DGKδの上流のホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC(PC-PLC)を同定するための準備として,PC-PLCの高感度・高定量性の測定法を開発した(論文発表済み).4.DGKδの発現量を上昇させる脂肪酸が個体レベル(2型糖尿病モデルマウス)で血糖値を低下させることを明らかにした(論文発表済み).5.DGKδが骨格筋で産生するPA分子種に対する結合蛋白質を複数検出・同定した.6.DGKδ欠損によってセロトニン機能の減弱が起こり, その結果, OCD様行動を引き起こすことが示唆され,また,DGKδはセロトニントランスポーターと相互作用することが明らかになった(論文発表済み).7.DGKη欠損によって引き起こされる様々な転写の変化を明らかにし,更に,DGKηが脳において産生するPA分子種を明らかにした(投稿準備中).
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