研究課題
ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解が様々な生命現象に重要な働きをしていることが明らかになり、注目を集めている。現時点までに、基質特異性を決めるユビキチンリガーゼ(E3)の研究、中でも哺乳類SCF複合体の研究が盛んに行なわれてきているが、出芽酵母SCF複合体の機能解析はあまり進んでいない。最近われわれは出芽酵母新規ユビキチンリガーゼSCFUcc1が、グリオキシル酸回路のクエン酸合成酵素(Cit2)を基質として分解し細胞内クエン酸量を調節していることを報告した。そこで、SCFUcc1の更なる機能解析、およびSCF複合体の新たな機能解析を行ない、ユビキチン依存性タンパク質分解という観点から様々な生命現象を解明することを目的として研究を進めている。(A)SCFUcc1の機能解析: われわれはUcc1の転写が培養に用いる炭素源により変化すること(グルコースでは上昇、酢酸では下降)を見出している。そこで出芽酵母遺伝子欠失株ライブラリーを用いてUcc1の転写に関与している遺伝子の同定を進めている最中である。(B)SCF複合体の機能解析:出芽酵母には21種類のF-boxタンパク質があり、 SCF複合体の基質認識サブユニットとして機能することが予想されるが、これらの基質はあまり明らかにされていない。そこで、F-boxタンパク質結合タンパク質(基質)を酵母two-hybrid法や免疫沈降法を用いて分離・同定している最中であり、一部のF-boxタンパク質に関しては基質を同定し、その機能解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではSCF複合体の新規機能解明を目的として研究を進めているが、現時点でSCF複合体の新規基質をすでに複数同定して、その生理学的意義の検討を進めている最中である。このことより、おおむね順調に進展していると判断している。
① SCFUcc1の機能解析 1. Ucc1の転写制御機構の解析 引き続きUcc1の転写にかかわる印紙の同意帝を進める。2. SCFUcc1によるカンジダ・グラブラータの感染制御機構の検討 カンジダ酵母の感染には、植物や菌類に特有の代謝系であるグリオキシル酸回路の活性化が必須と考えられている。そこで、SCFUcc1ホモログがカンジダ・グラブラータの感染制御に関わる可能性を、マクロファージの貪食実験によって検討する。まずカンジダ・グラブラータで、出芽酵母Ucc1ホモログ遺伝子であるCAGL0C01155g、CIT2ホモログ遺伝子であるCAGL0M09405gの遺伝子欠損株を作製する。そして各々の遺伝子欠損株をマウス血流マクロファージJ774に貪食させ、経時的にマクロファージからカンジダ・グラブラータの細胞を回収し、寒天培地に散布後、コロニー数を計測する。コロニー数の増減によって、マクロファージ貪食時における同遺伝子の関与を評価する。また、同遺伝子欠損株のマクロファージ貪食時におけるトランスクリプトーム解析を行い、これにより転写ネットワーク下流遺伝子を見出し、マクロファージ貪食時の生存・増殖現象の理解を試みる。② SCF複合体の機能解析 1. SCFDia2およびSCFMet30の機能解析 引き続き、生化学的および細胞生物学的解析を続ける。2. SCF複合体の新規機能解析 同定したSCF複合体の新規基質に対する生化学的および細胞生物学的解析を行う。
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Mol Biol Cell
巻: 28 ページ: 3532-3541
10.1091/mbc.E17-07-0450
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http://www.bio.nagoya-uac.jp/laboratory/mcb.html