研究課題/領域番号 |
17H03652
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嘉村 巧 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40333455)
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研究分担者 |
奥村 文彦 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (00507212)
中務 邦雄 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 准教授 (90547522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タンパク質分解 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解が様々な生命現象に重要な働きをしていることが明らかになり、注目を集めている。現時点までに、基質特異性を決めるユビキチンリガーゼ(E3)の研究、中でも哺乳類SCF複合体の研究が盛んに行なわれてきているが、出芽酵母SCF複合体の機能解析はあまり進んでいない。最近われわれは出芽酵母新規ユビキチンリガーゼSCFUcc1が、グリオキシル酸回路のクエン酸合成酵素(Cit2)を基質として分解し細胞内クエン酸量を調節していることを報告した。そこで、SCFUcc1の更なる機能解析、およびSCF複合体の新たな機能解析を行ない、ユビキチン依存性タンパク質分解という観点から様々な生命現象を解明することを目的として研究を進めている。(A)SCFUcc1の機能解析: われわれはUcc1の転写が培養に用いる炭素源により変化すること(グルコースでは上昇、酢酸では下降)を見出している。そこで出芽酵母遺伝子欠失株ライブラリーを用いてUcc1の転写に関与している転写遺伝子の同定を進めている最中である。(B)SCF複合体の機能解析:出芽酵母には21種類のF-boxタンパク質があり、 SCF複合体の基質認識サブユニットとして機能することが予想されるが、これらの基質はあまり明らかにされていない。そこで、遺伝学的及び生化学的手法を用いてSCF複合体の新規基質の同定を行い、複数の基質を同定している。そして現在生化学的及び細胞生物学的手法を用いてこれらの細胞生物学的意義の解明を進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではSCF複合体の新規機能解明を目的として研究を進めているが、現時点でSCF複合体の新規基質をすでに複数同定して、その生理学的意義の検討を進めて いる最中である。このことより、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1. SCFDia2およびSCFMet30の機能解析 引き続き、生化学的および細胞生物学的解析を進める。 2. F-boxタンパク質群と新規基質との結合部位およびその修飾の解析 基質がE3ユビキチンリガーゼと結合する際にはリン酸化などの修飾が認められるのが一般的である。免疫沈降法でF-boxタンパク質と結合する内在性タンパク質を精製する。In gelでトリプシン消化後、質量分析でその修飾および部位を同定する。野生型およびこの修飾部位に変異を 持つ新規基質の発現ベクターを作製し、酵母内での基質認識サブユニット群との結合を調べる。 3. 新規基質に対する試験管内ユビキチン化反応の検討 野生型あるいは2.で同定した修飾部位を欠くあるいは変異を持つ新規基質を大腸菌で発現させリコンビナントタンパク質を精製する。バキュロウイルス発現系を用いてSCF複合体を精製し、ユビキチン化反応に必要な酵素E1とE2そしてユビキチンさらにATPを加え新規基質と反応させることにより、試験管内で新規基質へのユビキチン化反応を起こすことができるかどうかを検討する。 4. 新規基質に対する細胞内分解の検討 3.の試験管内ユビキチン化反応により得られた情報を細胞内で確認する。野生型あるいは変異型の新規基質とF-boxタンパク質群を出芽酵母に発現させ、新規基質に対する抗体を用いて免疫沈降する。SDS-PAGEで展開した後、抗ユビキチン抗体でウェスタンブロットを行う。また、パルスチェイス法により新規基質の半減期を測定する。 5. 新規基質の分解制御による細胞生物学的影響の検討 新規基質のアミノ酸配列よりその酵母内での機能を予測する。F-boxタンパク質群の過剰発現あるいは遺伝子欠失によって新規基質の発現を制御することにより、どのような細胞生物学的変化が現れるかを解析する。
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