研究実績の概要 |
昨年度発表した論文において、K+イオンが1つだけ結合した結晶構造解析によって、その構造基盤を得た(Yamamoto et al., 2019, eLife)。これは、K+を2つ結合することが知られている近縁のナトリウムポンプ(アミノ酸配列の同一性にして65%以上)とは明確に異なるものである。カチオン結合サイトのどのような違いが、K;結合化学量論の違いを生み出すのであろうか?この点を明らかにするために、本年度は、カチオン結合サイトとその周囲のアミノ酸を置換した変異体を作成し、機能解析、結晶構造解析によって、2つのK+を結合したプロトンポンプを作り出すことで、演繹的にこれを理解することを計画した。 プロトンポンプとナトリウムポンプのアミノ酸配列と結晶構造を比較し、K791S/E820D/Y340N/E936Vの単変異から四重変異までを作成し、それぞれ結晶化に供した。三重変異体までは、Rbの異常分散によって結合したRb+の数は1つのままであったが、四重変異体において、野生型や他のミュータントと明確に異なる、広がりを持ったRb+異常散乱の密度を得た。この結果は、決定した構造がlumina-open formでありRb+が完全に「閉塞」された状態にないために、Rb+が1つ以上存在するがそれらの結合位置が一意に決まらないことに起因すると考えた。そこで、luminal gateが閉じた閉塞状態を安定化する変異(Yamamoto et al., 2019 eLife)をさらに導入した五重変異体を作成し,CryoEMによって構造解析を行った。2.6A分解能の構造を得ることに成功し、カチオン結合サイトには2つのK+が結合していた。この結果は、現在論文として取りまとめ、投稿中である。
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