研究課題
本研究では、いまだ解明されていない点の多いプレエンプティヴ品質管理に関する基礎研究を進め、新合成ポリペプチドの品質を監視・支配するBAG6-UBQLN4 複合体の作動機構を生化学・構造生物学などの手法を駆使して徹底解明することを目標にしている。また、この複合体の破綻がもたらす病理への全く新しい機構解明にチャレンジするため、細胞にヒトUBQLN4、あるいはBAG6 疾患変異タンパク質を発現させた影響を、独自のアッセイ系で評価することを目指している。さらに、BAG6-UBQLN4 複合体と疾患との関係を解明し、新しいALS/FTLD治療戦略へアプローチする途を提案することを最終的なゴールに設定している。本年度の研究では、BAG6-UBQLN4複合体を中核にした新しい膜タンパク質品質管理メカニズムの解明に挑むため、まず、 凝集性不良膜タンパク質を峻別するサーベイランス機構の解明にアプローチした。その結果、凝集性膜タンパク質の疎水性領域を好む新しいドメインを一つ新たに見出すことに成功した。さらに、ヒトBAG6-UBQLN4疾患変異モデルを作出し、疾患発症機構の解明に挑む足がかりを得るため、UBQLN4 疾患突然変異体をコードするcDNAをゲノムに挿入した新しいトランスジェニック細胞ラインを新しく確立することにも成功した。さらに、 不良膜タンパク質のユビキチン化を支配する新規BAG6会合E3リガーゼの同定を目指し、質量分析データのチェックを進めたところ、候補となるE3リガーゼ候補を複数見出すに至っている。今後、これまでの解析を通して得られた新知見を、プレエンプティヴ品質管理を介した細胞内不良タンパク質の新規サーベイランス機構として統合し、細胞機能保持のための新しい調節システムとしてその全貌を理解することを本研究の最終目標としている。
2: おおむね順調に進展している
初年度である本年度の研究では、BAG6-UBQLN4複合体を中核にした新しい膜タンパク質品質管理メカニズムの解明に挑むため、まず、 凝集性不良膜タンパク質の新しいモデルを確立するところからスタートした。その結果、一回膜貫通タンパク質HLA-A、トランスフェリンレセプター、NA, -K ATPase、グルコース輸送トランスポータGLUT4など、それぞれ特徴を持つ膜タンパク質を基質候補として同定することが出来、これらの合成不良体を峻別するサーベイランス機構の解明にアプローチを進めている。また、従来から開発していた凝集性不良膜タンパク質モデルIL-2Raの疎水性領域(膜貫通領域)を好む新しいBAG6タンパク質中のドメインを一つ見出すことに成功した。さらに、ヒトBAG6-UBQLN4疾患変異モデルを作出し、疾患発症機構の解明に挑む足がかりを得るため、UBQLN4 疾患突然変異体をコードするcDNAをゲノムに挿入した新しいトランスジェニック細胞ラインを新しく確立することにも成功した。さらに、 不良膜タンパク質のユビキチン化を支配する新規BAG6会合E3リガーゼの同定を目指し、質量分析データのチェックを進めたところ、候補となるE3リガーゼ候補を複数見出すに至っている。これらの進展を足がかりに、プレエンプティヴ品質管理を介した細胞内不良タンパク質の新しいサーベイランス機構を提案していきたいと考えている。
これまでの研究から、凝集性不良膜タンパク質の複数の新モデルを確立出来たことから、今後、これらを積極的に活用してBAG6-UBQLN4複合体が新合成膜タンパク質の品質を管理するメカニズムの実体に迫っていく計画である。具体的には、我々が最近新しく同定したBAG6, ならびにUBQLN4の新しい基質認識ドメインと不良タンパク質の相互作用をのキネティックスを定量的に評価し、再現性の高い実験系の構築を進める。同時に、質量分析データから新しく同定しつつあるE3リガーゼ候補の新機能を、基質群との親和性を再評価していくとともに、不良膜タンパク質のユビキチン化修飾の種類と意義を特異性獲得の観点から検討していく。さらに、我々が既に構築したUBQLN4 疾患突然変異体トランスジェニック細胞ラインを活用して、ヒトALS/FTLD疾患変異モデルの作出を進め、疾患発症機構の解明に挑む足がかりを得て、最終的に、BAG6-UBQLN4 複合体と疾患との関係を解明し、新しい治療戦略へアプローチする途を提案することをゴールに設定している。
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Sci. Rep.
巻: 7 ページ: 1-10
DOI:10.1038/s41598-017-14975-9
http://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celche