研究課題
(1)あらゆる蛋白質に対して,糖やアルコールなどの共溶媒の添加が熱安定性に及ぼす影響を統一的に説明できる理論を構築した。膜蛋白質に対しても,水溶性蛋白質の場合と同様に,スクロース①・グルコース②・マニトール③・エリスリトール④・グリセロール⑤の添加は安定化の向上に繋がり,その強さは①>②~③>④>⑤の順番に従い,プロパノールの添加は安定化の低下をもたらすことを予言した。その後,膜蛋白質としてTRとA2aR(G蛋白質共役型受容体(GPCR)の一種)を選定し,この予言が正しいことを実験的に確認した。(2)蛋白質の熱安定性を議論するためには「熱力学」が必要である。立体構造という微視的な幾何学的情報と熱力学的特性の連結法の確立は,生物物理学における未解決の最重要課題の1つである。RxRとHsBR(いずれもロドプシンに属する)はアミノ酸配列の相同性が非常に高いにも拘わらず,RxRの方が遥かに熱安定性が高い。本研究でRxRの結晶構造を初めて解いたが,驚いたことに,主鎖に対してはRxRとHsBRはほとんど同じ立体構造を有していた。こうしたことは膜蛋白質でしばしば見られる。各原子のx-y-z座標と力場パラメータのみから熱安定性を評価できる方法論を構築し,RxRとHsBRなる顕著な例に適用してその有効性を実証した。さらに,RxRでは,プロトンポンプとしての本来の機能を保持できるように巧妙に耐熱化を実現していることを示した。(3)熱変性温度が91.8℃と例外的に高いTRと呼ばれるロドプシンのさらなる耐熱化にチャレンジした。既に極めて高い熱安定性を有する膜蛋白質をアミノ酸置換によってさらに耐熱化させる新しい(GPCRの場合とは異なる)方法論を構築し,理論的に予言した二重置換によって熱変性温度が100度近くまで上がると同時に,TRのプロトンポンプとしての機能も保持されることを確認した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (9件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Journal of Molecular Liquids
巻: 301 ページ: 112403(1-10)
10.1016/j.molliq.2019.112403
Journal of Physical Chemistry B
巻: 124 ページ: 990-1000
10.1021/acs.jpcb.9b10700
Journal of Chemical Physics
巻: 152 ページ: 065103(1-16)
10.1063/1.5140499
Journal of Chemical Information and Modeling
巻: 60 ページ: 1709-1716
10.1021/acs.jcim.0c00063
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 4934(1-11)
10.1038/s41598-020-61966-4
月刊「細胞」,ニュー・サイエンス社
巻: 52 ページ: 37-41
アグリバイオ, 北隆館
巻: 4 ページ: 31-67
Biophysical Reviews
巻: - ページ: -
10.1007/s12551-020-00686-5
10.1007/s12551-020-00678-5
巻: 292 ページ: 111374(1-10)
10.1016/j.molliq.2019.111374
巻: 151 ページ: 044506(1-10)
10.1063/1.5100040
巻: 59 ページ: 3533-3544
10.1021/acs.jcim.9b00226
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/centerbunya/kinoshita/