SH3BP5、SH3BP5L がGEF活性を示すRab11Cは様々なガン細胞において高発現しており、α5β1インテグリンを細胞膜へとリサイクリングさせることによって、細胞の移動および浸潤を促進し、ガン細胞の転移に関与することが示唆されている。そこでまず、肺上皮腺ガン細胞においてSH3BP5、SH3BP5Lをそれぞれ、または両者を発現抑制したところ、細胞の移動能が顕著に阻害された。また、HEK293T細胞においてSH3BP5とSH3BP5Lの欠損細胞と二重欠損細胞を作製し、細胞移動能を解析したところ、SH3BP5、SH3BP5Lの一方でも欠損すると細胞移動が抑制され、二重欠損細胞ではより強く抑制されることが判明した。これらのことからSH3BP5とSH3BP5Lは細胞移動を正に制御していることが示唆された。そこで、Rab11により細胞表面へとリサイクリングされ細胞移動に関わるインテグリンに着目してさらなる解析を行った。まず、ビオチン化法により細胞表面に存在するインテグリンの存在量を確認した。その結果、SH3BP5、SH3BP5Lの欠損により細胞表面のインテグリンα5量が増加することが明らかとなった。また、細胞辺縁部の細胞外マトリックスへの接着部分におけるインテグリンα5は、これらを欠損することによってその凝集性に違いが認められた。以上の結果から、SH3BP5とSH3BP5LはRab11の活性化を介して細胞膜上のインテグリン量を調節することにより、細胞移動を正に制御していることが明らかとなった。現在、SH3BP5についてはコンディショナル欠損マウス、SH3BP5Lについては単純欠損マウスを作製し、表現型について解析を進めている。また、両遺伝子の二重欠損マウスの作製やコンディショナル二重欠損マウスの作製を進行させている。
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