研究課題
オートファジー始動を制御するULK1/Atg1複合体の形成機構および上流キナーゼmTORC複合体との相互作用について解析を進め、まず、酵母Atg13がC末端のTOS-likeモチーフを介してTORC複合体と相互作用し、この相互作用に伴うリン酸化が酵母Atg1複合体の形成を制御していることを見出した(投稿準備中)。また、これまで哺乳類ULK1複合体の形成機構は酵母Atg1複合体と大きく異なると考えられていたが、我々は選択的分解基質の存在が複合体形成に寄与している可能性を考え、複数の分解基質のKO細胞を使って再解析したところ、哺乳類ULK1複合体でも酵母Atg1複合体に近い複合体形成機構があることを新たに見出した。これは哺乳類におけるオートファジーシグナル解析の研究において重要な発見である。また、哺乳類ULK1複合体が飢餓状態に応じて細胞内相分離により液滴形成する可能性を見出しており、この液滴形成に関わるULK1複合体コンポーネントの同定やドメイン解析を複数の方法で進め、すでに興味深い結果を得ている。さらに我々は、ULK1複合体だけでなく、それがターゲットとする選択的分解基質も相分離によって液滴形成することを見出しており、分解基質の液滴とオートファジー始動に関わるULK1複合体の液滴が相互作用することでオートファゴソーム形成の最初のステップが進む可能性が示唆された。また、この分解基質の液滴には主要コンポーネントからなる相分離以外にも条件によって二相分離する様子を観察しており、主要コンポーネント以外の未知因子が含まれていることを示している。この未知因子の同定も分解基質の精製と質量分析で進めている。
2: おおむね順調に進展している
前年度には当初計画と比較してやや遅れがあったが、今年度の解析ではオートファジー始動複合体の形成機構だけでなく、相分離による液滴形成についても個々の因子のドメイン解析・機能解析から興味深い結果を得ており、さらに、オートファジー分子マシーナリー側の始動複合体だけでなく、オートファジー分解基質の相分離・液滴形成についても重要な知見を得ている。これらの新知見はオートファジー始動の分子メカニズムだけでなく、細胞内相分離の新たな一面を明らかにすることが期待される有用なものである。
哺乳類ULK1複合体の形成機構および相分離による液滴形成機構に関わるコンポーネント・ドメイン・翻訳後修飾を明らかにし、オートファジー誘導に伴う初期の分子機構の全体像を明らかにすることを計画している。また、新たに見出されたオートファジー分解基質の相分離・液滴形成についても解析を進める。この分解基質の相分離・液滴形成については培養細胞レベルでの解析以上に、組織レベル、個体レベルでの解析が生理的意義という面からも重要であると考えられるため、新たに個体(ゼブラフィッシュまたはマウス)を使った解析系を進める。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件)
Nat. Struct. Mol. Biol.
巻: 26 ページ: 289-296
10.1038/s41594-019-0204-3
Autophagy
巻: 15 ページ: 176-177
10.1080/15548627.2018.1532262
J. Cell Biol.
巻: 217 ページ: 2633-2645
10.1083/jcb.201712058