研究実績の概要 |
(1)カタユウレイボヤのアロ認識機構について: (i) s-Themis-A, -B, -B2の精子における局在性解析:免疫染色の結果からは精子頭部先端とミトコンドリア近傍と尾部に存在することが示唆された。(ii) s-Themisとv-Themisのタンパク質間相互作用の解析:s/v-Themis-Aとs/v-Themis-Bに関しては少なくとも1つのアレルに関しては大腸菌発現に成功している。今後は、さらに複数のアレルを発現させ、それらをS2昆虫細胞で発現させて、タンパク質間相互作用を解析する予定である。(iii) s/v-Themis-A, -B, -B2の遺伝子破壊実験による機能解析:TALEN法を活用してs/v-Themis-A, -B, -B2遺伝子を破壊し、アロ認識が解除されるか否かを解析中である。しかし、遺伝子組換えカタユウレイボヤが飼育中に感染症にかかって継代飼育できない等の問題点が生じている。また、奇妙なことに、s/v-Themis-A, B, B2のアレルが当初想定している以上に遺伝子重複している可能性があることが判明し、新たな問題が生じている。今後の検討課題である。(iv) アロ認識におよぼす海水中のカルシウムについて:カタユウレイボヤでは精子が自己卵の卵黄膜に結合するとカルシウムが流入し、卵黄膜から離脱して自家受精を防いでいる。今回、海水中のカルシウム濃度を低下させる実験を行ったところ、自家受精が可能になることが新たにわかった。またこの現象はマボヤでは見られないことから、両ホヤでアロ認識機構が異なることが明確となった。 (2)マボヤの受精におけるアロ認識機構:まだ予備実験段階ではあるが、マボヤ卵黄膜の酸抽出物中には、自家受精を可能にする因子が存在する可能性が示された。今後さらにその分子実体の解明を目指して検討を行う予定である。
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