研究課題
精子と卵の細胞間相互認識には、種認識(ゼノ認識)と同種異個体認識(アロ認識)が関わっている。海産脊索動物のホヤは雌雄同体で、精子と卵を同時に海水中に放出するが、多くの種で、自己と非自己の細胞認識(アロ認識)機構が働き、自家受精を回避している。これを自家不和合性という。申請者は、この現象に関わる候補分子(卵側のv-Themisと精子側のs-Themisの3つのペア:すなわち、s/v-Themis-A, -B, -B2)を同定している。当該年度では、s-Themisとv-Themisのアレル特異的相互作用の解明を目指して研究を行った。(1)s-Themisの精子における局在性:免疫染色法により、s-Themisが頭部先端と尾部に局在することを示した。(2)s-Themisとv-Themisの発現条件の検討:s/v-Themisを哺乳類細胞で発現させ、細胞外に分泌されるかを種々の条件で検討した。まず、MBPタグを融合させ可溶化を試みたが、満足できる結果は得られなかった。細胞外領域の長さの異なるリコンビナントを発現したり、コドン適正化を行いDNAを合成したが、可溶性タンパク質の大量発現には至らなかった。(3)マボヤにおけるs/v-Themisホモログ: s/v-Themis類似遺伝子がマボヤゲノムに存在することを再確認した。少なくとも4つの遺伝子モデルが同定され、個体間多型も見られることから、2つの複対立遺伝子座が関わる可能性が考えられる。カタユウレイボヤでは、海水中のカルシウム濃度を1 mM程度に下げると自家不和合性が解除される。s-Themis-B/B2のPKDチャンネルを介したカルシウムの流入が関わる可能性を考えているが、マボヤでは低カルシウム海水による自家不和合性解除は見られず、異なった機構により自家不和合性が制御されている可能性が考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Science Advances
巻: 7(9) ページ: eabf3621
10.1126/sciadv.abf3621
Scientific Reports
巻: 10(3) ページ: 22140
10.1038/s41598-020-79330-x.