研究課題/領域番号 |
17H03674
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70345031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞生物学 |
研究実績の概要 |
CIP4のタンパク質複合体形成を通じた膜形態変換機構に関して、CIP4の結合タンパク質であるYPEL発現精製系の構築を行った。YPELの量発現系の構築には一応の成功を見ていたものの、可溶化率が低く、正しいフォールドを持つタンパク質を得ることができていない懸念を持っていた。本年度は、不要画分の変性条件での可溶化、さらにリフォールディングをへて、多量の可溶性タンパク質を得ることができた。このタンパク質は、脂質膜自体と結合することが可能であった。 GAS7によるファゴサイトーシスカップ形成と伸長機構の解析に関して、GAS7は、試験管内で脂質膜と結合し、脂質膜の形状を変化させると考えられる。従って、試験管内で精製脂質により構成したリポソームとGAS7を反応させ、その形状の経時的な変化を、様々な反応時間後に固定したサンプルを電子顕微鏡で観察することで調べた。その結果、大きなリポソームに対しては、平面状の大きな変形構造を持つことを見出した。 BARドメインタンパク質を細胞において観察することでタンパク質の持つ膜結合面の曲率と膜の動態の関連を明らかにするために、蛍光タンパク質とBARタンパク質の融合タンパク質の安定発現株の構築を行った。GAS7の安定発現株をRaw267.4マクロファージ株を用いて作成し、ライブイメージングを行い、GAS7がファゴサイトーシスカップに集積することを見出した。 GAS7の結合タンパク質の探索による制御機構の解明に関して、GAS7のSH3ドメインにおける結合タンパク質としてアクチン制御タンパク質であるN-WASPやWAVEが知られているが、他の結合タンパク質は知られていない。GAS7結合タンパク質を酵母ツーハイブリッド法を行うことで、候補タンパク質を得た。候補タンパク質の中にはファゴサイトーシスやエンドサイトーシスに関連するものが多く含まれ、それらの結合をプルダウンなどで確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部YPELタンパク質の結晶化などに遅れが見られるものの、他は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. CIP4とPACSIN2のタンパク質複合体形成を通じた膜形態変換機構 まず、前年度成功した大量精製したYPELは、変性およびリフォールディングを経ているので、正しいフォールドかどうかの確認のゲル濾過などによる単分散性の評価およびCIP4のF-BARドメインとの結合のをプルダウン解析により評価することで確かめる。すでにCIP4やPACSIN2のF-BARドメインと脂質膜の結合をYPEL1及びYPEL5が抑制することを見出しているが、得られたタンパク質を用いてさらに確かめる。様々な大きさのリポソームを作成し、結合の曲率依存性も調べる。また、YPEL自体の脂質結合も評価する。さらに、YPELに対する抗体を作成し、内在性のタンパク質の特に浸潤突起における局在を調べる。また内在性のPACSIN2やCIP4との共局在も調べる。 2. GAS7によるファゴサイトーシスカップ形成と伸長機構の解析 GAS7結合タンパク質を酵母ツーハイブリッド法を行って得られた幾つかの候補タンパク質の細胞内での共局在を調べる。また、膜張力を様々に変化させたリポソームを作成し、GAS7の張力依存的な膜結合や、脂質膜の組成に応じた膜結合を調べる。 3. IRSp53とCIP4、PACSIN2、GAS7の局在と細胞突起進展の関連の解析 超解像用の蛍光タンパク質とBARタンパク質の融合タンパク質の安定発現株をRaw267.4マクロファージ株などにより作成する。タイムラプスイメージング。BARタンパク質の局在をライブイメージングで捉え、BARタンパク質の間の違いを明らかにする。
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