研究課題/領域番号 |
17H03677
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石原 直忠 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10325516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / オルガネラ / 膜融合 / GTPase / mtDNA |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは2重膜構造からなる細胞内小器官であり、エネルギー生産のみならず様々な細胞制御に関与している。このミトコンドリアは細胞内で活発に融合と分裂を繰り返しており、またミトコンドリア内部の遺伝子mtDNAはミトコンドリア内で動的に形態と配置を変化させている。これらのミトコンドリアのダイナミックな形態変化が様々な生命現象の制御に関与していることが明らかになりつつあるが、その分子機構には不明な点が多く残されている。そこで哺乳動物のミトコンドリア融合・分裂を制御するGTPase及びその関連因子を同定・解析することでその分子理解を進めている。ミトコンドリアの融合制御タンパク質を精製し膜に再構成することで膜融合反応の詳細解析を進めており、視神経形成異常となる遺伝病の原因遺伝子産物として同定された内膜のGTPaseタンパク質OPA1と脂質の協調的な膜融合反応の解析を進めた。膜結合型のL-OPA1と可溶型のS-OPA1の機能変換や、脂質組成(特にカルジオリピンの特性)について詳細な生化学的解析を進めた。一方、ミトコンドリアダイナミクスを変動させた細胞系を構築しその詳細解析を行うことで、その生理的意義についての研究を進めた。様々な細胞環境時での外膜と内膜の2重膜の変形に着目して研究を行ったところ、ミトコンドリアが膜電位を消失した状況ではミトコンドリアは独特な膜微細構造を形成することが明らかになり、細胞応答とミトコンドリアダイナミクスとの関係の理解を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア融合の分子機構解析に関しては、ミトコンドリア内膜融合に関与する因子OPA1のうち、膜貫通領域を持つL-OPA1と膜貫通領域をタンパク質切断されたS-OPA1の両方をカイコ幼虫発現系を用いて発現させ精製し詳細な解析を行ったところ、その融合における特性の違いを詳細に解析することができた。さらに哺乳動物培養細胞を用いて脂質合成酵素の関与を調べたところ、カルジオリピンの合成酵素が内膜の融合やミトコンドリア内部のmtDNAからなる核様体構造の制御に関与することを見出し報告することができた。さらにミトコンドリアの3次元微細構造観察を行うことで、機能不全となり膜電位を消失したミトコンドリアの独特な形態制御機構を見出すことができた。このようにミトコンドリア膜の動的変化に関して多方面からの研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これらの新視点からのミトコンドリアダイナミクス研究をさらに進めていく。ミトコンドリアの融合制御の分子機構に関しては、融合制御因子の発現・精製を進め、そのタンパク質特性の解析をさらに進めていく。並行して、哺乳動物培養細胞のミトコンドリアを生細胞観察し、siRNAを用いた遺伝子スクリーニングから既にミトコンドリアの構造制御に関わる遺伝子候補群を同定している。これまでの研究でタンパク質や脂質の制御に関与する一連の遺伝子がmtDNAの配置を含むミトコンドリア内部の構造制御に影響を及ぼすことを見出しており、更なる詳細解析からミトコンドリアの膜とゲノムの制御の分子機構とその関係の解析を進める。
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